| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-280 (Poster presentation)
近年顕著になっている気候変動が、森林を構成する多様な植物の光合成活性に作用し、森林生態系の一次生産に影響をもたらすことが懸念されている。 この将来予測や脆弱性の評価をするには、生態系内の種が持つ光合成特性の時空間的変動および環境応答を明らかにする必要がある。
そこで本研究では、生態系を構成する樹種の個葉光合成生産に関わる生理生態的特性とそれらのフェノロジーを明らかにすることを目的とした。
岐阜大学高山試験地の冷温帯落葉広葉樹林に優占する林冠木(ダケカンバ、ミズナラ)、低木(ノリウツギ、オオカメノキ)、および常緑のクマイザサを調査対象として、2025年6月から10月にかけて、個葉の光合成特性、形態、窒素含量、クロロフィル含量などを観測した。また森林スケールのCO2吸収量との関係を検討するために、同調査地で観測されているCO2フラックスデータから総一次生産速度(GPP)の環境応答と季節変化を分析した。
森林を構成する主要な植物種の個葉の最大光合成速度は先行研究にも見られたように顕著な季節変化を示した。展葉完了期の6月から7月にピークを示し、その後10月の黄葉期まで緩やかに低下した。しかしこれらの傾向は樹種により異なり、例えばダケカンバはミズナラに比べて早い時期にピークに達していた。また光ー光合成曲線の特徴は高木と低木で差があり、高木の光合成能が低木の3〜5倍、また種内でもミズナラの樹冠表層と下層で差があり表層が1.5倍程高かった。季節または異なる樹種を通じて、最大光合成速度と葉の窒素含量には正の相関が見られた。
森林スケールでのCO2吸収量は顕著な季節変化を示した。GPPは4月はじめの融雪後に上昇を始め、さらに5月中旬に林冠木の展葉と同時に増加した。GPPは7〜8月にピークに達し、その後9月から10月末にかけて低下した。11月中には林床のササの光合成によるとみられるGPPが確認された。