| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-283  (Poster presentation)

植食者の行動種内変異は木本植物のトランスクリプトームをどう変えるのか?【A】
How does intraspecific variation in behavior of herbivore insects alter the transcriptional induced respose of woody plants?【A】

*大山淳史, 内海俊介(北海道大学)
*Atsushi OYAMA, Shunsuke UTSUMI(Hokkaido Univ.)

 陸上植物は、植食者や病原菌の攻撃に対して、成長様式の変化や二次代謝産物の増加などの可塑的な誘導反応を示す。このような誘導反応は、植食者間の間接効果を介在して、その群集構造や進化的応答に対して重要な役割を果たす。群集構造や進化的応答の決定をする上で、誘導反応の特異性は重要な特徴である。たとえば、植食者種間の摂食様式や摂食部位の違いによって、発現する誘導反応が異なることが知られる。また、摂食様式と部位が同じであっても、食痕の特徴(食痕の大小や振動の違いなど)が異なることによって誘導反応が精密に変化することが知られている。しかしながら、植食者の種内における行動変異によって植物の誘導応答がどのように変化するかについて、研究事例はほとんどなく実態が分かっていない。
 本研究では、ヤナギ科を寄主とし、摂食行動の種内多型が知られているヤナギルリハムシ(Plagiodera versicolora)に着目した。本種の種内多型はヤナギの誘導反応に影響を与えることが示唆されているが、その実態は分かっていない。本種はヤナギ属植物をよく利用するがポプラ属も利用することができるため、ゲノム情報が蓄積されているポプラF1交雑種(Populus tremulra x Populus Alba)を用いてこの実態に迫ることを本研究の目的とした。
 ハムシの行動多型に関わるジェノタイピングを行い、異なる摂食行動を示すグループを作出した。次に、ポプラにそれらを接種し、かつ摂食部位を制御した操作実験を行った。そして、トランスクリプトーム解析を行い、誘導反応における遺伝子発現プロファイルを比較した。その結果、植食者の摂食行動における種内多型によって植物の誘導応答が変化することが示された。
 本研究は、植物―植食者の相互作用において、植食者の種内の遺伝変異や小進化が確かな影響を有するという証拠を提示するものである。


日本生態学会