| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-286 (Poster presentation)
【序論・方法】
訪花昆虫にとって、花の形質は報酬量や採餌効率を示すシグナルとして機能し得ることが知られている。葯のサイズが大きいほど花粉量が多く、また日数の経過にともなって葯のサイズや花粉量が減少する場合、葯のサイズは花粉量を示すシグナルとなり得る。しかしながら、実際に昆虫が葯サイズに応じて訪花する花を選択しているかは特に野外条件下ではほとんど検証されておらず、また葯の形質の経日的な変化は、これまで考慮されてこなかった。
本研究では、葯が大きく目立つコオニユリLilium leichtliniiの野外操作実験を通じて、葯サイズが花粉量を示すシグナルとして機能するかを検証した。まず、無処理の花における葯サイズの経日変化と昆虫の訪花頻度を記録した。次に、袋掛けにより花粉の持ち去りを防ぎ、葯サイズを維持させた花を用意して訪花頻度を比較した。さらに、葯の一部を切除して花粉量を半減させ、訪花者の行動を比較した。
【結果・考察】
無処理の花において、葯の幅と長さは開花1日目から3日目にかけて減少した。そして、花粉を報酬としたハチは、葯の幅が小さい花ほど少なく、袋をかけた花では日数が経過しても葯のサイズとハチの訪花頻度が一定程度維持された。これらの結果から、コオニユリにおいて経日変化する葯のサイズはハチにとってのシグナルとなっていると考えられる。一方で、開花1日目の花に限定すると葯のサイズとハチの訪花頻度の間に有意な関係はみられず、葯の初期サイズに対してはハチの選択が生じていないと考えられる。
花粉量を半減させた花では、ハチが一度の訪花で花粉を採餌する時間は変わらず、着陸する葯の数が有意に増加した。よって、訪花者にとって花粉量の少ない花への訪花は効率的ではないと考えられる。
これらの結果から、葯サイズの経日変化がハチにとってのシグナルとなっており、シグナルとして利用することで花粉を効率的に採餌することが可能になると考えられる。