| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-288  (Poster presentation)

造網性クモの生態系エンジニアリング-クモ網が植物-植食者間相互作用に与える影響-【A】
Ecosystem engineering by web building spiders -the effects of cobwebs on plant-herbivore interactions-【A】

*三嶋大翔(弘前大学), 横川寛太(弘前大学), 池本美都(国立環境研究所, 弘前大学), 橋本洸哉(弘前大学, 国立環境研究所)
*Sho MISHIMA(Hirosaki Univ.), Kanta YOKOGAWA(Hirosaki Univ.), Mito IKEMOTO(NIES, Hirosaki Univ.), Koya HASHIMOTO(Hirosaki Univ., NIES)

陸上生態系において,造網性クモ類は,捕食者としての機能だけでなく,植物上の造網によって他の生物の生息空間や餌資源となりうる植物の物理的構造を変化させる生態系エンジニアとしての機能も持つ.さらに,網はクモの死後も残存し,節足動物に長期間効果を与え続ける可能性がある.発表者らのこれまでの研究により,クモの網のみの場合でも植食者(イチゴハムシ)密度の減少とそれによる植物(エゾノギシギシ)現存量への正の効果が見られた.しかし,網にかかって死亡する植食者個体は見られなかったため,網の存在が植食者の行動を変化させた可能性が示唆されたものの,実際に植食者の行動がどのように変化したかは依然として不明であった.また,これまでは一種のみへの影響を検証していたが,クモの網は特定の種の密度や行動のみならず節足動物群集全体を変化させる可能性もある.そこで本研究では, (1)網が植食者の行動に与える影響と,(2)造網性クモの存在が周囲の群集組成に与える影響の検証を目的とした.(1)について,網付着植物(エゾノギシギシ)と,非付着の植物との間で,イチゴハムシの摂食量に違いは見られなかった.また,網にかかる経験をしたイチゴハムシ個体と,していない個体で,移動量や摂食量に違いは見られなかった.(2)では,野外においてクモの網からの距離ごとに群集を比較した.RDAの結果,飛翔性種の群集組成は網からの距離ごとに異なる傾向があった.一方,徘徊性種の群集ではそのような傾向は見られなかった.調査対象としたクモの網は飛翔性種を対象としたトラップであるため,飛翔性種は造網性クモの影響をより強く受けた可能性がある.本研究から,クモの網の存在によって,イチゴハムシでは直接的な行動変化は見られなかったが,他の飛翔性動物では,行動変化やそれに起因する密度の変化を通して群集組成が変化する可能性がある.


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