| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-289  (Poster presentation)

カザリショウジョウバエの訪花を支える学習能力と脳構造【A】
Learning Ability and Brain Structure Supporting Flower-Visiting Behavior in Drosophila elegans【A】

*川村康平, 桂宗広, 石川由希(名古屋大学)
*Kohei KAWAMURA, Munehiro KATSURA, Yuki ISHIKAWA(Nagoya University)

昆虫の訪花性は農業や生態系の維持を介して人間に利益をもたらす。このため訪花戦略の理解は学術的にも社会的にも重要である。しかし、どのような行動や神経機構の獲得が訪花性の進化に寄与したのかは不明である。ハチやチョウは花の特徴を学習して効率的に訪花している。このような「花の特徴を学習する能力」は、訪花性の進化に伴って向上してきたのだろうか。また、その学習能力の向上にはどのような神経機構が寄与しているのだろうか。これを解明するため、本研究では訪花性のカザリショウジョウバエ(以下カザリ)に花の色を学習する能力があるかを調べ、さらに色と匂いに関する学習能力と関連する神経機構を非訪花性の近縁種キイロショウジョウバエ(以下キイロ)と比較した。まずカザリにおいて、特定の色の人工花で報酬(餌)を与え、その経験が色への選択性を変化させるか調べた。カザリは報酬を得た色への選好性を上昇させたことから、カザリは花の色を学習できることが示された。次に色/匂いを報酬と連合させる学習能力を種間比較した。報酬を経験した色に対する選好性の変化はカザリで著しく、匂いに対する変化はキイロで著しかった。このことからカザリは色特異的に学習能力を向上させていることが示唆された。学習能力の種間差に関わる神経機構を調べるため、視覚と嗅覚の一次処理中枢の体積と、学習に関わるドーパミン作動性ニューロンの細胞数を種間比較した。その結果、嗅覚一次中枢の体積とドーパミン作動性ニューロン数に種間差は検出されなかった一方で、視覚一次中枢には種間差があり、カザリでより発達していた。本研究により、カザリは訪花性の獲得に伴って花の色を学習する能力を向上させ、また色の感覚処理に関する脳領域を肥大化させたことが示唆された。他の訪花性昆虫を解析対象に広げることで、訪花性の進化に伴って獲得された行動や神経機構を普遍的に解明することが期待される。


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