| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-291 (Poster presentation)
鳥類の果実選好性は,種子散布を通じて植物の分布や遷移に影響を及ぼす.大型鳥類であるカラス属は,種子散布者としての研究例が少ないが,形態的・生態的特性が他鳥類と異なるため,特有の果実選好性を示す可能性がある.例えば,体重が重いことから,低木や蔓性植物の細い枝上では採食が制限される可能性がある.また,高い知能を有することにより,採餌効率を高めるために粗脂肪率が高い果実を選好する可能性が考えられる.
本研究では,(1)カラス属は果実選好性を示すか,(2)その選好性に影響する要因は何か,の2点を検証した.(2)については,植物の生活型と果肉の粗脂肪率が選好性に影響するという仮説を立てた.
新潟大学農学部棟屋上において2年間にわたり,カラス属の吐き戻しを採取し,種子の含有率から果実採食量を評価した.22種の植物種について,調査地周囲2kmの被覆面積を調査し,果実資源量の指標とした.また,果実重量,果肉の粗脂肪率,生活型(高木・亜高木を高木群,それ以外を低木群)などを調査した.
(1)では,被覆面積と採食量のケンドール順位相関係数を算出した.(2)では,果実採食量を目的変数,被覆面積,果実重量,粗脂肪率,生活型などを説明変数とするGLMを構築し,AIC最小モデルを最適モデルとした.
(1)の結果,果実資源量と採食量の相関係数は−0.03と極めて小さかった.選好性を示さない場合,採食量は資源量に比例し,相関が強くなると考えられるため,本結果は果実選好性を示すことを示唆する.(2)の結果,最適モデルには被覆面積と生活型が選択され,高木群の果実は低木群よりも有意に採食量が多かった.一方,粗脂肪率は最適モデルに含まれなかった.以上より,カラス属は高木・亜高木の果実に対して選好性を示し,それらの樹種の分布拡大や遷移を促進する種子散布者として機能する可能性が示唆された.