| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-292 (Poster presentation)
昆虫食害による葉の損失は,植物の成長や生存に影響を及ぼす。植物の葉形質は光環境の違いに応じて,耐陰性による種間差と,生育光環境による個体間差が生じるため,葉の被食されやすさも種間・個体間で異なると考えられる。本研究では,ブナ林構成樹種を対象に,種間および種内における光環境―形質―被食の関係を明らかにする。
調査は新潟県魚沼市のブナ二次林で行った。光環境の異なる調査地点を51箇所設置し,20樹種,計571個体を標識した。各個体の地際幹直径から地際断面積(BA)を算出した。2025年8月下旬から9月中旬に標識個体の葉を採取し,物理的形質(物理的強度,厚さ,LDMC,LMA)を測定した。さらに,葉1枚当たりの葉面積損失割合を目視により評価し,個体ごとの被食率を算出した。また,各調査地点において全天開空率を算出した。種間解析ではGLMを用い,光環境が葉の物理的形質に与える影響,および葉の物理的形質が被食率に与える影響を調べた。種内解析ではGLMMを用い,樹種を切片および各変数に対するランダム効果とし,光環境と個体サイズが葉の物理的形質に与える影響および葉の物理的形質が被食率に与える影響と,その種間差を調べた。
種間では,全天開空率が高い環境に出現する樹種ほど葉の物理的強度が低く,葉の物理的強度が高い樹種ほど被食率が低かった。種内では,全天開空率が高い環境に出現するBAが高い個体ほど葉の物理的形質が高かったが,葉の物理的形質と被食率との関係はいずれも有意ではなく,全種に共通の傾向はみられなかった。しかし,樹種別にみると,全天開空率が高い環境の個体ほど葉の物理的強度が高い関係は落葉樹に限られ,常緑樹では葉の物理的強度が高い個体ほど被食率が低かった。
以上より,光環境を介した葉の物理的形質の違いは,種間では被食防御として機能する一方,種内における被食防御としての機能は落葉樹と常緑樹で異なる可能性が示唆された。