| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-293 (Poster presentation)
植物は花の色を用いて送粉者を誘引することで送粉行動をより効率的に行えるように進化してきた。近年では花粉の視認性も訪花者の訪花行動に影響することが指摘されており花の視認性の評価は花弁の単純な色だけでは評価できないことが浮き彫りにされてきた。しかし、花粉の色の視認性に関する研究においては、露出した花粉の色は背景の花弁と類似するという傾向が唯一1本の論文で指摘されたのみである。そこで本研究では花粉の色が花弁の色・花の形・送粉者の組成ごとに特徴があるかを比較した。
草本植物50種の花弁・花粉もしくは葯(以後、花粉)の反射スペクトルデータを分光器を用いて採取した。花弁や花粉の反射スペクトルを標準化し、花弁の色に対してマンハッタン距離に基づく非階層クラスター分析で5つの色グループ(白・青・紫・紫外線吸収黄色・紫外線反射黄色)に分類した。各種の花粉の色と花弁の色距離を計算し、クラスター間、花の相称性、花粉露出の有無、最も多く訪れていた送粉者の分類群(ハチ目・ハエ目・チョウ目)のグループ間で花弁-花粉距離に一貫した傾向があるかどうかを評価した。更に、標準化した花粉の反射スペクトルを使用して、ハチ目色覚モデル上における色相を計算し、花弁-花粉の距離同様に複数のグループ間で比較を行った。
その結果、花弁-花粉の色距離において、青色花弁のグループでは紫外線吸収黄色花弁のグループと比べて花弁との色距離が大きいことが分かった。その他の色グループ間・花粉露出・花の相称性・送粉者の間では有意な差は検出されなかった。色相に関しては花弁クラスター間では有意な差が検出されたが、他のグループ間ではいずれも有意な差は検出されなかった。今回の結果は花弁と花粉との間で関連がある事がうかがえたが、送粉者との関係を抽出するには至らなかった。これはサンプル数の少なさが原因とも考えられる。