| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-297 (Poster presentation)
ある個体が食害などの被害をうけると、匂い物質(揮発性有機化合物)が放出され、これを被害をうけていない近隣の健全個体が受容すると、健全個体内で食害をうける前に防衛が誘導される。この現象を植物間コミュニケーションといい、異種間でも発生することが報告されているが、コミュニケーションが起こりやすい種間の条件は明らかになっていない。防衛にはコストを要することから、受け手側は信頼性の高い情報(匂い)を選択して防衛を誘導する可能性がある。本研究では、受け手側と時間・空間を長期的に共有してきた植物の匂いの方が信頼性の高い情報として利用されると仮説を立てた。そして、同種個体間でコミュニケーションを行うことが明らかになっているヤブツバキを一方の種とし、他方を日本在来種あるいは外来種であるヨモギ、ヤツデ、セイタカアワダチソウ、シロツメクサとした。そして、各組み合わせにおける植物間コミュニケーションの強さを評価した。
まず、ヤブツバキを受け手側、他の種を匂い源として、野外における匂い曝露後の食害を調べた。しかし、匂い源の種類と被害率の間には有意な関連性は認められなかった。また、ヤブツバキおよびそれぞれの同種個体を匂い源とし、ヤブツバキ以外の種に曝露した。その後、室内でハスモンヨトウ幼虫を用いた摂食実験を行った。その結果、セイタカアワダチソウでは、同種個体の匂いに曝露した場合に幼虫の体重増加率が減少する傾向となった。さらに、シロツメクサでは、ヤブツバキの匂いと同種個体の匂いに曝露した場合に、幼虫の体重増加率が有意に低下し、防衛が誘導されていた。これらのことから、同種個体の匂いは誘導防衛を引き起こしやすいことが示された一方で、異種間のコミュニケーションについては、匂い成分や、共通する植食者の存在なども考慮しつつ検証する必要があることが示唆された。