| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-301  (Poster presentation)

同所的に生育するツガザクラ属植物の送粉様式と繁殖特性の比較【A】
Comparisons of pollination system and reproductive traits among sympatric Phyllodoce spp.【A】

*小山理文, 工藤岳(北海道大学)
*Toshifumi KOYAMA, Gaku KUDO(Hokkaido Univ.)

北海道の高山群落において、ツガザクラ属(Phyllodoce)植物は高い花密度と蜜生産量から、送粉者であるマルハナバチの重要な訪花種である。雪解けの早い場所ではエゾノツガザクラ(P. caerulea)が、遅い場所ではアオノツガザクラ(P. aleutica)が分布し、コエゾツガザクラはその中間帯に他の2種と混生しながら分布する。コエゾツガザクラは先行研究(Kameyama et al. 2008)で他の2種間の交雑で生まれたF1雑種(P. caerulea x P. aleutica:F1)であることが判明しており、雪解けが中程度の場所ではコエゾツガザクラとアオノツガザクラが混生することが多い。両者の開花期は重なるため、送粉競争が生じていると考えられ、このときマルハナバチの獲得を争う「搾取型競争」と異種間花粉散布による「干渉型競争」の2つの可能性がある。
本研究では、アオノツガザクラの分布はコエゾツガザクラとの送粉競争を避けるために、雪解けの遅い場所にシフトした可能性について検証した。方法は、2025年のアオノツガザクラ開花期(7月上旬~8月上旬)に、コエゾツガザクラとの混生比が異なる10プロットでマルハナバチの訪花頻度と行動を記録し、その行動から送粉を巡る種間競争について解析した。その結果、マルハナバチのプロットへの訪花頻度は両者の花密度と正の相関があったが、コエゾツガザクラの方が誘引効果が高い傾向があった。また、プロット内のアオノツガザクラへの訪花頻度は、コエゾツガザクラの混生比が高いほど減少する傾向があった。さらに、アオノツガザクラを訪花しているマルハナバチの異種間移動割合は、混生比が高いほど増加する傾向があった。よって両者の間にはマルハナバチを巡る種間競争が存在し、特に干渉型競争がアオノツガザクラの繁殖成功に負の効果をもたらすことが予測された。以上の結果は、アオノツガザクラの分布が雪解けの遅い場所にシフトするのは、交雑種との競争回避が関係しているという仮説を支持するものである。


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