| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-303 (Poster presentation)
トカゲ類の一部は雑食性で果実を採食し、糞とともに種子を排泄することから、近年では種子散布者として機能することが知られつつある。昼行性種の場合、日光浴による体温調節のために日当たりの良い開けた環境を選好することから、光要求性の高い植物にとって好適な環境に種子を運搬するという指向性種子散布が成立する可能性がある。
本研究ではこの仮説を検証するため、マダガスカルの雑食性トカゲであるブキオトカゲに小型の電波発信機を呑ませ、排泄された糞の位置を特定する野外調査を実施した。さらに、2種の哺乳類(チャイロキツネザル、オオアシナガマウス)、1種の鳥類(クロヒヨドリ)についても、目視追跡や種子タグ追跡により散布地点を調べ、調査エリアのランダムな地点と比較することで散布環境を評価した。加えて、トカゲを含むこれら4種の散布者が食べる果実の種構成と特性を比較し、各動物が散布する植物とその生育適地との関連について検討した。
散布環境評価の結果、ブキオトカゲは周囲の樹木や下層植生が少なく、開空度の高い開けた環境に種子を散布するという、本仮説を支持する結果が得られた。一方、哺乳類や鳥類ではランダムもしくはより閉じた環境に散布しており、動物種によって散布環境が質的に異なることが明らかとなった。
また、各散布者が食べていた果実は種構成が異なり、トカゲが種子サイズの小さな果実を中心に食べていることが明らかになった。資源貯蔵の少ない小型種子をもつ植物は、発芽後すぐに栄養源として光合成を必要とするため、トカゲによる開けた環境への種子散布は、これら小型種子植物の光要求に応える好適な条件を提供し、より効果的な散布として機能している可能性が示された。
本研究で明らかになった指向性種子散布は、汎世界的に成立しうる昼行性トカゲ特有の機能であり、森林更新や再生において、トカゲが従来の想定以上の質的な重要性を有することが示唆された。