| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-304 (Poster presentation)
現在、世界的に進行している都市化は生物多様性を変化させ、種子散布や花粉媒介といった動植物間の相利的相互作用に影響を及ぼすことで、生態系機能の劣化を引き起こす可能性が指摘されている。これまでの都市化と種子散布の関係に関する研究は、主に散布者の種組成の変化に着目してきたが、散布量や散布プロセスの変化は十分に検討されていない。そこで本研究では、生態系における鳥類の役割に直結する機能形質である体サイズ構成に着目することで、都市化に伴う鳥類群集の変化、そして鳥散布植物の散布者構成および散布プロセスの変化を調査した。鳥散布樹木エノキを対象として、結実木を訪れた鳥類を大型・中型・小型に区分して種子散布量を推定した。カラス類などの大型種ほど行動圏が広く体内滞留時間が長いことから遠距離散布を担う傾向がある点に注目した。
2024・2025年の結実期に大阪府北部および東部の都市部から山林部にかけてエノキ計94個体を観察し、さらに両地域54地点で鳥類群集調査を実施した。その結果、都市化に伴い鳥類群集の種数は減少する一方で、エノキの種子散布量は維持あるいは一部地域では増加する傾向が示された。北部では山林部に大型のカラス類がほとんど出現せず、エノキの種子散布はメジロやヒヨドリなどの小型種・中型種に依存していた。一方都市部ではカラス類が主要な散布者となり散布量が増え、遠距離散布が相対的に強化される可能性が示唆された。対して東部では山林部と比べて都市部での鳥類の個体数の増加は認められなかったが、都市部のエノキ個体で散布量が増加する傾向が認められ、これはこの地域の都市化勾配の急峻さによると考えられる。このように都市化は、植物種によっては必ずしも散布機能を低下させるとは限らず、動植物間相互作用を強化させうることが明らかとなった。また、その影響は一様でなく地域特性と相互作用しながら影響を与えると考えられる。