| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-305 (Poster presentation)
鳥類は樹木や低木を中心に多くの植物の種子を散布する主要な散布者であり、日本の森林においても多肉質果実をもつ植物の繁殖に重要な役割を担っている。固着性の生活を営む植物にとって種子散布は、親個体から離れた場所へ子孫を送り出し分布を拡大するだけでなく、遺伝子の移動や環境変動への適応を可能にする不可欠な過程である。この過程は、鳥類が果実を発見し採食することから始まるため、植物は果実の存在を効率的に認知させる視覚的シグナルを進化させてきたと考えられる。とりわけ熟した果実が鮮やかな色彩を呈することは、優れた視覚能力をもつ鳥類への適応であると広く議論されてきた。
実際に、鳥類が赤色や黒色など特定の色の果実を選好する可能性は多くの研究で示唆されている。しかし、それらの多くは飼育個体や人工条件下で実施された実験に基づいており、自然環境下での自由な採食行動との対応関係は十分に検証されていない。また、鳥類はヒトとは異なり紫外線域を含む4色型色覚を有するにもかかわらず、果実色の分類や評価はヒトの視覚に基づく場合が多く、鳥類の視覚特性を踏まえた理解は依然として不十分である。
さらに、鳥類の採食行動は果実の色だけでなく、行動範囲や森林内での空間利用とも密接に関連する。鳥類種ごとに利用する高さや活動空間は異なり、林冠や亜高木層、下層などの垂直的な環境選好が知られている。そのため、果実がつく位置、すなわち植物のサイズや樹高は、鳥類による果実選択に影響する重要な要因であると考えられる。植物が鳥類の色嗜好と行動範囲に適合した位置に果実をつけることで、より効率的に採食され、結果として種子散布効率を高めている可能性がある。
本研究では、鳥類の色に対する嗜好性、行動範囲、植物のサイズと果実色の関係に着目し、果実の色と配置が鳥類の採食行動とどのように対応しているかを検証することを試みる。