| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-307 (Poster presentation)
植物は移動することができないため、植食者に対して多様な被食防御戦略を進化させてきた。その一つとして花外蜜腺によるアリの誘引がある。花外蜜腺は花以外の部位から蜜を分泌する器官であり、誘引されたアリは植食性昆虫を排除し生物的防御として機能することが知られている。これまで多くの植物で食害を受けると蜜分泌量が増加する誘導防御が報告されてきた。一方で、食害の強さ(程度)に応じて蜜分泌がどのように変化するのかを検証した研究は限られている。
そこで本研究では、食害の程度(無処理・25%・50%・75%)がアカメガシワの花外蜜分泌量に及ぼす影響を定量的に評価する操作実験を行った。あわせて、針刺しによる吸汁食害を模倣した処理を与え、吸汁刺激によって蜜分泌が誘導されるかを検証した。
その結果、食害処理後7日間の合計蜜量には処理区間で差がみられ、75%食害区は0%、25%、50%食害区と比較して有意に高かった。一方、0%、25%、50%食害区間では差はみられなかった。また、蜜量の経時変化をみると、25%、50%、75%のすべての食害区において、食害後1–2日目に蜜量が増加し、その後減少する傾向がみられた。0%食害区では大きな変動はなかった。針刺しによる吸汁食害処理では、対照区と比較して蜜分泌量の有意な増加はみられなかった。
以上の結果から、アカメガシワの花外蜜の分泌は食害の有無に一律に反応するのではなく、一定以上の被害に対して強く誘導される可能性が示唆された。特に、針刺しによる刺激や軽度の食害では明瞭な反応がみられなかったことから、単なる物理的損傷ではなく、葉面積の実質的な損失が蜜分泌誘導に関与している可能性が考えられる。これは、植物が深刻な被害に対して選択的に防御応答を強める仕組みを有することを示唆している。今後は実際の植食性昆虫を使った実験によって、より自然条件下での反応を検証することも検討中である。