| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-308  (Poster presentation)

受粉成功に応じた散布体形質の変異は種子散布効率を高めるか?:風とアリ散布の比較【A】
Does pollination-induced variation in diaspore traits enhance the seed dispersal efficiency? – A comparative study of wind- and ant-dispersed plants【A】

*南家楓子, 井田崇(奈良女子大学)
*Fuko NANKE, Takashi IDA(Nara Women's University)

種子や果実といった散布体の形質は、その機能や散布効率が多く研究される一方で、植物の交配様式との関連は見逃されていた。しかし、両者は密接に関係している。例えば、局所適応仮説や近親交配回避仮説によると、主に自殖を行う種が親個体付近に種子を散布するのに対し、主に他殖を行う種は近親交配を避けるため、⻑距離散布を好むとされる。また、自殖であれ他殖であれ、散布後の実生が密集すると兄弟間の競争が激しくなる。これは、果実や個体の受粉成功が高く実生が多いときほど顕著であると予想される。すなわち、自殖や他殖による違いといった静的な戦略だけでなく、受粉成功に応じた動的な散布戦略があるかもしれない。
本研究は、種子散布様式の異なる自家不和合性の草本2種を用いて、交配成功が主導する散布形質の変異を調べた。クサタチバナでは、種髪とその風による散布能力、エゾエンゴサクでは、エライオソームとアリ散布の関係に着目した。受粉成功の異なる果実の散布体形質の変異と、散布体形質が種子散布に与える影響を調査し、受粉成功と種子散布の関連性を評価した。
クサタチバナでは、果実あたりの種子数が多いほど、種髪のサイズが大きくなり、大きな種髪の散布体ほど終端速度が小さくなった。すなわち、潜在的な散布距離が長くなることで、種子の分散が促された。一方、エゾエンゴサクでは、果実あたりの結実率が高いほど、エライオソームの平均サイズは小さく、その変異は大きくなった。そのエライオソームを集めるアリ3種は、エライオソームの形質に対して異なる選好性をもっていたため、その変異の大きさは、異なる種子散布者による散布体運搬を引き起こし、種子の分散が促された。
本研究の結果は、受粉成功に応じた動的な散布体生産が、種子散布効率を促進することを示した。これは、植物の繁殖戦略を理解する上で、送粉と種子散布の連関を考慮することの重要性を示唆している。


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