| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-311 (Poster presentation)
陸上植物は、葉・花・果実といった機能の異なる器官を通じて、多様なマイクロハビタットを提供し、各器官上には特異的な節足動物群集が形成される。また植物が産生する防御物質は植食者の利用を左右し、特定の専門食者のみを許容する環境フィルターとして機能するとされる。だが強力な毒をもつ植物において、器官差と季節変動が重なり合うことで節足動物群集がどのように構造化され、どのような動態を示すのかについては、体系的な検証はほとんど行われていない。本研究では猛毒植物シキミ(Illicium anisatum)を対象に、毒濃度の異なる器官ごとに形成される節足動物群集の季節と器官による変異を明らかにした。調査は大阪府箕面市および交野市で行った。葉上の節足動物については通年調査を行い、季節と部位(当年枝と前年枝)ごとの出現データに基づく群集解析を行った。花ではインターバル撮影を用いて訪花昆虫の来訪パターンを記録し、採集した花食性鱗翅目幼虫を羽化させることで種同定を行った。さらに落下種子の羽化実験により、種子利用ギルドの構成と食害様式を明らかにした。その結果、シキミでは葉・花・果実・種子といった器官ごとに異なる節足動物ギルドが形成され、特に、少なくとも18目55種が確認された葉上群集では季節および部位に応じて群集構造が変化することが示された。花では双翅目や鞘翅目による訪花と、複数種の鱗翅目幼虫による花食を確認した。種子では少なくとも3種の鱗翅目幼虫や鞘翅目などが捕食者として確認された。葉では主にジェネラリストが、種子では主にスペシャリストとみられる節足動物が確認され、これは先行研究(中沢ら,1959)で明らかになっているシキミの器官ごとの毒濃度の変異に対応している可能性がある。これらの結果は、植物毒が環境フィルターとして利用する節足動物種を制限するものの、猛毒植物でも器官差と季節性を背景に多様な節足動物群集が成立しうることを示している。