| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-312  (Poster presentation)

なぜトビイロシワアリは,明確なエライオソームを付けないユキヤナギの種子を選ぶのか【A】
Why do Tetramorium tsushimae transport Spiraea thunbergii seeds with no distinct elaiosome?【A】

*和田彩楠(近畿大学農学部), 山元駿介(近畿大学大学院), 平岩将良(近畿大学農学部), 澤畠拓夫(近畿大学農学部), 早坂大亮(近畿大学農学部)
*Wada AYANA(Fac.Agric.,KINDAI Univ.), Shunsuke YAMAMOTO(Grad.Sch.Agric.,KINDAI Univ.), Masayoshi K HIRAIWA(Fac.Agric.,KINDAI Univ.), Takuo SAWAHATA(Fac.Agric.,KINDAI Univ.), Daisuke HAYASAKA(Fac.Agric.,KINDAI Univ.)

生物の分散成功の可否は種の存続に直結している。特に、自力での分散が困難な植物にとって、種子の散布は個体群拡大の重要な機会である。そのため、多様な種子散布戦略を進化させてきた。そのひとつである、アリ類との共生に特化した「アリ散布」は、付属物であるエライオソームを報酬としてアリ類に与える代わりに、アリの巣内外に種子を運搬させる戦略である。一般的に、アリ類は栄養豊富な場所に巣を作る傾向にあることなどから、アリ散布は他の散布戦略よりも生育適地への運搬が効率的とされる。そのような中、これまで重力散布とされてきたユキヤナギの種子がトビイロシワアリによって運搬される行動が観察された。本種の種子は、一見して「明確な報酬がみられない」にも関わらず、多数の種子が巣に運搬された。しかし、最終的に巣外に搬出された種子は、「巣の入り口を取り囲むようにドーナツ状に積み上げ」られていた。このような種子運搬行動は、他のアリ散布植物では見られない。種子にとって、高密度に積み上げられることは、種子間競争の激化につながり、発芽成功にとっても不利でしかないだろう。しかし、現時点で、本種の種子とアリ類との関係は不明である。そこで本研究では、トビイロシワアリを介したユキヤナギ種子の運搬メカニズムの解明を目指し、その一端を実験的に評価した。試験1(ユキヤナギ種子における報酬の実態):アリ類への報酬として一般的な脂質と糖がユキヤナギ種子にも存在するのかどうかを、各種の染色試験から検証した。試験2(運搬された種子のアリによる利用実態):人工巣にトビイロシワアリのコロニーを導入後、本種の種子の運搬実態と巣内での利用実態(採食など)を検証した。本発表では、これらの試験結果をもとに、ユキヤナギ種子におけるトビイロシワアリの役割について議論する。


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