| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-313 (Poster presentation)
種子散布は,樹木個体群の更新と維持のために不可欠なプロセスである.特に動物による種子運搬は,親木近傍で生じやすい密度依存的死亡を回避し,種子をより離れた地点へ到達させることで個体群の維持に寄与し,その結果,森林群集の構造や生物多様性にも影響を与えると考えられている.一部の齧歯類や鳥類が行う貯食散布は大型堅果をもつ樹木で多く見られ,その個体群維持に寄与するとされる.しかし島嶼環境では,典型的な貯食散布者が欠如している地域もある.そのような環境下でも貯食散布型樹種の個体群が存続している理由は十分に解明されていない.
本研究では,在来のネズミ類が不在で貯食散布者が著しく制限されている八重山諸島において,貯食散布型樹種の種子散布の実態を明らかにすることを目的とした.島内に広く分布するエゴノキ(Styrax japonicus)を対象に調査を行った.調査地として石垣島・西表島内の計4サイト、および比較対象として大阪府交野市の大阪公立大学附属植物園1サイトを設定し,2025年8~12月に調査を実施した.種子の利用者を特定するため,樹上および林床の種子に対して自動撮影カメラを設置し,種子への動物の接触および持ち去り行動を記録した.また散布を担いうる動物の有無を明らかにするため,各サイト6-16地点においてポイントセンサス法による動物相調査を行った.
エゴノキ種子に対して,八重山諸島と植物園において,樹上で14種,林床で25種の動物の接近が確認され,うち樹上で4種,林床で7種が種子に接触した.石垣島と植物園でそれぞれオリイヤマガラとヤマガラによる種子運搬が観察された.八重山では種子の持ち去りは主にオリイヤマガラによって担われたが,その観察地点は限定的であった.種子の持ち去りを行った他の鳥類は主として種子捕食者として働くと考えられるが,条件によっては散布を行う可能性が示唆された.現在,別樹種も含めて調査を継続しており,散布プロセスの解明を進めている.