| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-315  (Poster presentation)

花芽に虫こぶを作るタマバエの生活史と虫こぶ内部の生物群集の解明【A】
The flower bud gall community of Eurya japonica and the life history of a gall producing midge【A】

*長島帆花(神戸大学), Ayman K. ELSAYED(Saga University), 徳田誠(佐賀大学), 辻かおる(神戸大学)
*Honoka NAGASHIMA(Kobe University), Ayman K. ELSAYED(Saga University), Makoto TOKUDA(Saga University), Kaoru TSUJI(Kobe University)

虫こぶは一種の植食様式として栄養豊富な餌資源を提供するだけでなく、物理的防御や安定した生息環境としても機能している。このような環境は他の生物を誘引し、一部の虫こぶでは多様な生物種からなる群集が形成されることが報告されている。しかし、その実態に関する知見は限られており、特に花に作られる虫こぶのように構造の維持期間が比較的短い場合に群集が形成されるかどうかは、ほとんど解明されていない。花に形成される虫こぶの一例として、タマバエの一種によりヒサカキの花芽が肥大化した虫こぶが知られている。この虫こぶでは形成者が未同定であり、その生活史や生態も明らかでなかったため、まず形成者の同定および生活史の解明を行った。形成者であるタマバエの幼虫や羽化成虫の形態観察、分子系統解析の結果、本種はSchizomyia属の未記載種であることが分かった。本種は虫こぶから脱出したのち土中で越夏し、実験室内では7月から11月にかけて断続的に羽化した。羽化個体とともに寄生蜂が確認され、その形態的な特徴からInostemma属の寄生蜂であると考えられた。さらに、虫こぶ内でみられるタマバエと寄生蜂以外の生物種についても調査したところ、真菌の菌糸や、複数種のダニ、アザミウマなどが観察された。この真菌を同定した結果、本種は世界中に広く分布する樹木病原菌Botryosphaeria dothideaであった。本菌は多くのタマバエの虫こぶ内で観察されることが報告されており、本種とも密接な相互作用を持つ可能性がある。これらの結果をまとめると、維持期間が比較的短い花に形成される虫こぶであっても、虫こぶ内には形成者のタマバエ以外にも、共生者とみられる真菌に加え、菌食者、植食者、捕食者、寄生者と予想される生物種からなる群集が形成されている可能性が考えられる。


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