| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-316 (Poster presentation)
ブナ科は森林の極相を形成する代表的な植物であり、その堅果の主な散布過程には「重力散布(一次散布)と動物(特に齧歯類)による二次散布が組み合わさった多段階散布(diprochory)」および「樹上での動物(特に鳥類)による果実持ち去り」の二つがある。しかし、散布過程全体における鳥類の寄与の相対的重要性やその樹種間および種内での変異に関する知見は乏しい。そこで本研究では、ブナおよびコナラ・ミズナラを対象に、重力散布された果実量と鳥類による樹上および林床の果実持ち去り量をそれぞれ定量化することで、種子散布への鳥類の寄与を解明し、ブナ科の種子散布様式を定量的に考察することを目的とした。
北茨城市の小川試験地(保護林)とその周辺の断片林でブナとコナラ・ミズナラを対象に調査した。鳥による果実利用の直接観察から果実持ち去り量を樹上・林床ごとに推定し、林床の落下果実の収集から重力散布された果実量を推定した。その結果、鳥は樹上の果実のみを持ち去り、健全果実総生産に占める鳥による樹上果実の持ち去り量はブナで5%(断片林)および79%(保護林)、コナラで3%および4%(両断片林)、ミズナラで0%および4%(両断片林)と推定された。特に、ブナの樹上果実の鳥による持ち去り率は保護林(79%)より断片林(5%)で低く、これは断片化によって果実のしいな率が高まったことが原因と考えられる。また保護林内のブナ個体間でも樹冠面積等の相違に応じて鳥による果実持ち去り量は異なっていた。
鳥類はブナ科樹種の一次散布者として働いたが、その種子散布への寄与は樹種間で異なり、ブナでは鳥散布への依存度が大きい可能性が示された。また林分面積や樹木個体ごとの結実状況などに応じて鳥による種子散布量に種内変異が生じることが示唆された。また森林の断片化はしいな率の上昇を通じて鳥によるブナ科の種子散布量を減少させる可能性が示された。