| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-317  (Poster presentation)

ジャコウアゲハは環状剝皮を介して植物の防御物質をどのように調整するのか?【A】
How does Atrophaneura alcinous regulate plant defensive compounds through girdling behavior?【A】

*野村しおり(近畿大院・農), 石若直人(近畿大院・農), 平岩将良(近畿大・農), 早坂大亮(近畿大・農)
*Shiori NOMURA(Grad sch Agric, Kindai Univ), Naoto ISHIWAKA(Grad sch Agric, Kindai Univ), Masayoshi HIRAIWA(Fac Agric, Kindai Univ), Daisuke HAYASAKA(Fac Agric, Kindai Univ)

植物と植食性昆虫は共進化しており、植物は植食者による摂食に対抗すべく物理的・化学的な防御方法を獲得してきた。他方で、植食者は植物の防御物質を突破するため、摂食箇所への防御物質の流入を阻害するための様々な行動をとる。そのひとつである「環状剝皮」(茎や葉柄の表面を環状にかじりとる)は、剝皮上部への防御物質の流入阻害や栄養素の増加等を目的としており、成長戦略のための行動と考えられている。だが、類似の行動を行いつつも天敵防御手段として、敢えて植物の防御物質を利用する種も存在する。その一種であるジャコウアゲハは、有毒なアリストロキア酸(AA)が含まれるウマノスズクサ科植物を専食し、AAを体内に蓄積することで天敵防御している。しかし、4–5齢幼虫の一部は、食草に対して環状剥皮を行う。環状剥皮は防御物質の減少が目的との説が正しいとすれば、AAを積極的に利用する本種によるこの行動は、体内のAAが高濃度にならないよう調整するためのものであると考えられる。しかし、現時点で、剝皮後における幼虫の成長や葉内のAAの動態を詳細検討した事例はない。本研究では、植物とその植物の防御物質を利用する植食者間の相互作用と共進化の更なる理解にむけ、ジャコウアゲハ幼虫による環状剝皮行動の生態学的意義の解明を試みた。
試験は、幼虫による環状剝皮の有無のほか、人工的に環状剝皮する処理を含めて行い、本種の成長と植物体内のAA動態を比較した。その結果、摂食量に処理による差がなかった。しかし、幼虫の成長率は非剝皮株と比べて幼虫剝皮株では同程度であったが、人工剝皮株で増加した。つまり、環状剝皮が植物体内のAAや栄養素の量を調整することを目的とするという仮説を支持するものだが、幼虫自身が環状剝皮に割くコストも高いということを示唆している。本発表ではこの他、各処理後の植物体内におけるAAを比較した結果についても報告する。


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