| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-319  (Poster presentation)

2種の近縁なシロチョウ種間での重金属耐性の違い【A】
Differences in heavy metal tolerance between two closely related Pieris butterflies【A】

*伊藤百彩, 岡村悠(東京都立大学)
*Hiiro ITO, Yu OKAMURA(Tokyo Metropolitan Univ.)

近縁な植食性昆虫はしばしば食草を競合するが、実際には種によって野外で異なった食草を使い分けていることが観察される。これらの使い分けは実験室による飼育実験では再現できない場合が多く、環境的な要因が大きく作用すると考えられる。シロチョウ亜科蝶類であるヤマトスジグロシロチョウPieris napi(以下ヤマト)と近縁種のスジグロシロチョウPieris melete(以下スジ)はそれぞれアブラナ科草本を食草とするが、西日本ではヤマトは、鉱山に産し重金属を蓄積するハクサンハタザオArabidopsis halleriを主な食草とし、スジはこれを全く用いていない。そこで、本研究では、ヤマトとスジの野外での食草の使い分けの背景として、食草の重金属蓄積の有無が重要ではないかと考え、両種の重金属耐性を明らかにすることを目的とした。
実験室下で育成したハクサンハタザオに亜鉛とカドミウムを複数の濃度で添加し、それをヤマトとスジの初齢幼虫に与え、6日後に幼虫の重さを測定した。結果、両種とも重金属未添加状態で十分に成長したが、スジでのみ添加した重金属量に応じて成長に負の影響が見られた。このことから、ヤマトはスジに比べて重金属に対する耐性が高いことが示された。またハクサンハタザオと、アブラナ科草本であるダイコンRaphanus sativusの2種を用いて、ヤマトとスジの産卵選好性を調べた。その結果、ダイコンに対しては両種とも同様に産卵するが、ハクサンハタザオに対してはヤマトのみが高い産卵選好性を持つことがわかった。
今回の結果は、スジが重金属を蓄積するハクサンハタザオを避ける一方で、より高い重金属耐性を持つヤマトがこれを好んで利用することを示した。これは、土壌中の無機成分の有無が近縁な植食者間のニッチ分割を引き起こしうることを示唆する結果である。


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