| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-320  (Poster presentation)

複数の空間スケールの結実豊凶が中大型哺乳類による落下堅果の採食行動に与える影響【A】
The effects of mast production at multipile spatial scales on the foraging behavior of medium- and large-sized mammals on fallen Fagaceae hard mast.【A】

*吉竹歩(東京農工大学), 稲垣亜希乃(東京農工大学), Seung-Yun BAEK(TUAT), 栃木香帆子(国立環境研究所), 山﨑晃司(東京農業大学), 小池伸介(東京農工大学)
*Ayumu YOSHITAKE(TUAT), Akino INAGAKI(TUAT), Seung-Yun BAEK(TUAT), Kahoko TOCHIGI(NIES), Koji YAMAZAKI(TUA), Shinsuke KOIKE(TUAT)

地上で果実を採食する中型から大型の哺乳類(以下、中大型哺乳類)は、地域・林分・結実木の各空間スケールにおいて、周囲より結実量が多い場所を選択して採食を行う。この結実量の差に応じた採食場所の選択の強さは、地域全体で結実が同調し豊作年と不作年を繰り返す「結実豊凶」に応じて調整される。特に結実量が欠乏する不作年には、中大型哺乳類は結実量が多い地域や林分で採食する傾向がより強まることが知られる。一方で、地域スケールの結実豊凶が、結実木の樹冠下での中大型哺乳類の採食行動に及ぼす影響は明らかでない。そこで本研究では、ブナ科樹種を対象に、結実木スケールでの豊凶に応じた採食場所の選択の強さの変化が結実木の樹冠下でも生じるかを明らかにすることを目的とし、結実木の個体結実量と地域結実量の変動が、結実木の樹冠下における採食を伴う訪問回数(以下、採食イベント数)に与える影響を調べた。
栃木県日光市で2020年から2024年にかけて、ミズナラとコナラ計73個体の調査木を選定し個体結実量を推定するとともに、調査木と異なる樹木を選定し地域結実量を推定した。さらに、自動撮影カメラを用いて調査木の樹冠下における中大型哺乳類の採食イベント数を記録した。
採食イベントが観察されたのは主にニホンジカ、イノシシ、ツキノワグマ、ニホンザルであった。これら4種において個体結実量が増加するほど採食イベントの発生確率が上昇し、動物が結実木の樹冠下で採食を行うかの判断の際に個体結実量が重要な指標になっていることが示唆された。一方、地域結実量の多寡によって個体結実量が結実木の樹冠下における動物の採食イベント数に及ぼす影響は変化せず、結実豊凶に応じた結実木単位での採食場所の選択の調整は行われていないことが示唆された。今後は複数の空間スケールを同時に評価し、結実豊凶に応じた行動の調整が生じるスケールを明示的に県境する必要がある。


日本生態学会