| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-321  (Poster presentation)

ハチにとって「似た色」とは?:波長スペクトルでは説明できない色のカテゴリー知覚【A】
What are "similar colors" to bees? - Categorical perception of color not explained by the wavelength spectrum.【A】

*鈴木郁惠, 大橋一晴(筑波大学)
*Ikue SUZUKI, Kazuharu OHASHI(Tsukuba Univ.)

ある植物が、送粉者を介して別の植物の生殖成功に正の影響を与える、間接効果を「促進」と呼ぶ。促進は開花時期に時間差がある場合にも起こり、後から開花した植物が、先に咲いていた植物に訪れていた送粉者を引き継ぐことができる。このとき、先行種と花色が似ているほど送粉者の移行が起こりやすいと考えられている。しかし、送粉者にとってどのような色が「似ている色」と認識されているのかについては、十分に検証されてない。ハチの弁別学習能力は、三種の光受容体の感度に基づく色空間(color hexagon)上の距離と共に増加し、学習した色刺激からの一般化反応も、色距離に応じて連続的に変化すると報告されている。したがって、ハチは過去に学習した花との色空間上の距離が近い色をもつ花に、高頻度で訪花すると予測される。本研究ではこの仮説を検証するため、クロマルハナバチと人工花を用いた室内実験をおこなった。まず、青色の花を学習させた個体に、レモン色とそら色の花を同時提示する実験をしたところ、色距離の近いそら色への訪花が多く観察され、仮説と矛盾しなかった。ところが、そら色と群青色を提示すると、両色は色空間上で十分に離れているにも関わらず、青色を学習させた個体の訪花頻度に差はなかった。これは、ハチの「似た色」への訪花が、色距離のみでは説明できないことを示す。すなわちヒトの用語でいう「色相」の共通性に相当する特徴が、色の類似性判断に影響している可能性がある。そこで、花の色を、その色によって最も強く興奮するハチの光受容体に基づき三種類の色相に分け、青系の花を学習させたハチに、その花から色距離は近いが色相の異なるUV系の花と、色距離は遠いが同じ青系の花を同時提示したところ、ハチはUV系の花より、青系の花をより頻繁に訪れた。以上の結果は、送粉者にとっての「似た色」の選択が、色空間上の距離だけでは決まらず、むしろ青系、UV系といった色のカテゴリー分けに基づいている可能性を示唆している。


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