| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-326 (Poster presentation)
ラン科最小級の花を持つことで知られるヨウラクラン属の2種、ヨウラクランとオオバヨウラクランの複数の自生地で送粉調査を行い、28S rDNA領域を用いた訪花者の系統解析を行った結果、大部分がさび病菌を産卵場所とするサビタマバエ属に属することが明らかとなった。これらの結果から、ヨウラクラン属2種は、花を産卵場所としてのさび病に擬態させることで送粉者を誘引している可能性が示唆される。
本研究では、サビタマバエを誘引するメカニズムの解明、およびヨウラクラン属2種の送粉生態の比較、さらに送粉者であるサビタマバエの基礎的な生態および系統的多様性の理解を目的とし、[研究1]ヨウラクラン属2種の花の匂い成分の比較およびヨウラクランの花の匂いを用いた誘引実験、[研究2]さび病上での産卵行動の観察、[研究3]東北地方から九州地方にかけての35地点において、54種(42属・29科・17目)の植物上に形成されたサビキン(約42種、15属、10科)から計400個体を採集し、mtDNA COI領域を用いた系統解析を行った。さらに、確認された約50のOTUとさび病菌およびその宿主植物との関係性をネットワーク解析により検討し、ヨウラクラン属2種の送粉者との関連性について考察した。
これらの研究から、[結果1]ヨウラクラン属2種は花の匂いを構成する主な物質が大きく異なり、ヨウラクランの花の匂い物質6-MMSが送粉者と同種のタマバエを誘引すること、[結果2]サビタマバエは花への訪花と同じ時間帯である夜間にサビ病上で産卵を行うこと、[結果3]サビタマバエが従来知られるよりはるかに大きな系統的多様性をもち、それぞれの種が一定の寄主特異性をもつものの多数のさび病を利用するという複雑な種間相互作用をもつこと、ヨウラクラン属2種の主な送粉者サビタマバエは系統的に大きく分かれること、が明らかとなった。一方でヨウラクラン属2種の擬態モデルと考えられるさび病は現時点で明らかではなく、今後の課題である。