| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-327 (Poster presentation)
生物がもつ色はしばしば視覚的なシグナルとして機能する。生物の色は多くの場合、太陽光に含まれる光の一部を色素が吸収し、吸収されなかった光が反射され色として知覚されるが、一部には入射された光によって励起された分子がより長波長の光、蛍光を発することで現れる色も存在する。生物の発する蛍光は反射光と比較して非常に弱く、自然光下では肉眼で認識できない。しかし、動物においては蛍光が視覚的シグナルとして機能する例が複数知られている。植物においても花粉や花蜜、花弁などが蛍光を発することが知られているが、動物のようにそれらの蛍光が視覚的なシグナルとして機能することを実験的に示した研究は限られている。本研究では、紫外線を照射すると花弁から強い青色蛍光が発せられるムラサキ科ホタルカズラに注目し、これらの蛍光の特性の調査と、蛍光が視覚的なシグナルとして機能しているかどうかの検証を試みた。ホタルカズラの花弁切片の紫外光下での観察により、蛍光物質は花弁の向軸側表皮の突起状細胞と背軸側の表皮に局在しており、青色色素は表皮以外に存在していることが明らかになった。また、紫外線を吸収する試薬により蛍光を消失させたホタルカズラの花や、ホタルカズラを精巧に模した模型にホタルカズラ花弁から抽出した蛍光物質を塗布することで作製した蛍光模型をコントロールの花、模型と共に野外のハナバチに提示する行動実験を行ったところ、ハナバチは蛍光を消失させていない花、および蛍光を付加した模型により多く訪れた。さらに日本産ムラサキ科植物の数種について暗室内で花弁に紫外線を照射したところ、いくつかの種について強い青色蛍光が見られた。これらの結果からホタルカズラの花弁蛍光は、送粉者であるニッポンヒゲナガハナバチを含むハナバチの誘引に寄与する可能性が示唆され、他の日本産ムラサキ科植物も花弁蛍光によりハナバチ類を誘引している可能性が考えられる。