| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-329 (Poster presentation)
多くの生物において集団間交配が生じる接触帯は,種分化メカニズムを理解する上で重要な場である.北海道に生息するサッポロフキバッタPodisma Sapporensis Shiraki(以下,サッポロ)は,染色体再編成により北部に分布するX0レース(基本型)と東部に分布するXYレース(変異型)が存在し,北海道北部と中央部で接触帯を形成している.一般的に集団間交配は個体の適応度低下を招きやすいため,接触帯では集団間交配の回避機構が強く働くと考えられる.しかし先行研究では,接触帯集団に交尾前隔離機構が見られない可能性を示しており,複数回交尾が交配コストを軽減している可能性があるが,誤交配のリスクを高めるかもしれない.複数回交尾を行う種の雄は,父性率を確保するために交尾後の雌の繁殖行動を操作することが知られており,本種の接触帯でも同様の機構が適応度低下の回避に機能している可能性がある.そこで本研究では,サッポロにおける交尾後の雌の繁殖行動に着目した集団間の相互交配実験を行い,交尾雄の由来が雌の再交尾および産卵行動に与える影響を調査した.接触帯集団と側所集団を用いた4処理区で不応期,初交尾後の産卵開始日数,生涯産卵数を比較した.その結果,不応期には雌雄の由来による影響は見られなかった.一方,産卵開始日数は雄の由来に影響され,接触帯雄と交尾した雌は側所雄と交尾した雌よりも早く産卵した.また生涯産卵数には雌雄の由来間に交互作用が見られ,集団内交配した雌は集団間交配した雌より多く産卵した.以上より,接触帯では雄による正交配した雌の産卵行動への操作によって,集団間交配で生じる適応度低下を回避している可能性が示唆された.発表では,集団間交配後の繁殖行動がもたらす接触帯維持メカニズムについて議論する.