| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-330 (Poster presentation)
【背景】
福島第一原発事故により大量の放射性セシウムが放出され、水産物に大きな影響を及ぼした。福島県のスズキにも出荷制限が指示されたが、一般食品中の放射性セシウムの基準値(100 Bq/kg)を下回り続け2018年には解除された。以降、国のモニタリングおよび福島県漁連の自主検査において、基準値を超過した個体は確認されていない。しかし、2023年の1個体において福島県漁連が定めた自主基準(50 Bq/kg)を超過し、約2か月間の出荷自粛が実施された。このような事例の評価には、本種の生活史を踏まえた理解が不可欠である。そこで特に河川利用に着目し、137Cs濃度との関係を検討した。
【方法】
福島県内4サイト(北部沿岸海域、真野川、請戸川下流、請戸川河口)においてスズキ234個体を刺網および釣りにより採集した。各個体について標準体長(SL)を測定し、SL 350 mm以上を成魚、350 mm未満を未成魚として、137Cs 濃度とd13C・d15Nを測定した。また一部の個体では耳石Sr/Ca比の線分析により生涯の生息履歴を推定した。
【結果・考察】
成魚の137Cs濃度の最大値は、北部沿岸海域で1.12 Bq/kg(n = 39)、真野川で5.83 Bq/kg(n = 25)、請戸川下流で51.2 Bq/kg(n = 3)、請戸川河口で2.29 Bq/kg(n = 7)であり、未成魚に比べて沿岸海域および河口域では低値で推移した。一方、未成魚の最大値は、北部沿岸海域で1.09 Bq/kg(n = 31)、真野川で6.38 Bq/kg(n = 60)、請戸川下流で193 Bq/kg(n = 8)、請戸川河口で168 Bq/kg(n = 61)であり、原発近傍に位置する請戸川で高値を示した。137Cs濃度に加えてd13C・d15NやSr/Ca比の結果から、河川・汽水域の利用頻度が高い未成魚が確認される一方、成長に伴い海域利用が増加する傾向が示された。以上より、スズキの137Cs濃度は生息地利用履歴、特に河川利用の程度を反映する指標(トレーサー)となり得ると考えられた。