| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-332  (Poster presentation)

振動センサーを用いたニホンジカの行動状態を考慮した生息地選択解析の検討【A】
Habitat selection of sika deer based on behavioral states using motion sensor【A】

*久山高平, 吉原佑(三重大学)
*Kohei HISAYAMA, Yu YOSHIHARA(Mie University)

ニホンジカは日本を代表する森林性哺乳類であり,高い生態的可塑性を示す種である.これまでのテレメトリー研究により,季節や時間帯によって生息地選択性を変化させることが明らかにされてきた。シカ科有蹄類では,草原などの開放地は採食場所,森林は休息場所として機能することなどが知られており,行動状態に応じて利用環境が異なる可能性がある.しかし,ニホンジカにおいて行動状態を明示的に考慮した生息地選択解析は行われておらず,空間利用についての行動戦略は十分に理解されていない。そこで,GPS首輪に内蔵された振動センサーによる行動推定とStep Selection Function(SSF)を組み合わせ,行動状態に応じた生息地選択解析を行った.
振動センサーによる行動推定は三重県亀山市に生息するメスジカ2頭を対象に行った.GPS首輪と行動記録用のカメラを装着し,センサー値と行動を照らし合わせ,決定木を用いて行動分類閾値を算出した.その結果、センサー値が2または3以上で活動的行動,それら未満だと非活動的行動と分類され,分類精度は90%以上であった.
行動を考慮したSSFによる生息地選択解析は,閾値決定に用いた2個体に伊賀市のメスジカ3個体を加えた計5個体で実施した.その結果、人間の活動時間帯である日中は,行動状態に関わらず開放地を忌避した一方で,活動的行動時に採食に適した林縁付近を,非活動的行動時に林縁から離れた森林奥部を選択していた.また,人間に遭遇するリスクのない夜間は行動状態に関わらず開放地と林縁付近が選択された.さらに,人間との遭遇リスクが中程度の薄明薄暮では,活動的行動時に開放地を選択した一方で,非活動的行動時には忌避しており,採食と警戒のトレードオフへの対処が示唆された.
以上より,ニホンジカは人間との活動時間帯をずらすだけでなく,行動状態に応じて選択環境を切り替えることによって,エネルギー獲得と人間との遭遇リスクの低減を両立していることが示された.


日本生態学会