| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-336 (Poster presentation)
動物は、活動に必要なエネルギーを得るために採餌を行う。採餌には事故や捕食者への遭遇などのコストが伴うため、餌の質や採餌環境に応じた適切な採餌方法を選択する必要がある。採餌における行動選択の仕組みを調べることは、動物の採餌についての判断基準を理解するために重要である。今回は、そのための材料として複数の採餌方法を持つアリに注目した。アリの液体餌を採集する方法は、餌を飲んで運ぶ栄養交換と、餌を大顎でつかんで運ぶバケット行動の2種類が存在する。南西諸島に生息するトゲオオハリアリ(Diacamma cf. indicum)はこれら2つの方法を使い分けることが知られている。使い分けの基準として、採餌経路の環境が挙げられる。長く高低差のある道のりでは、短く平坦な道のりと比較してバケット行動の選択率が高くなることが示唆されていた。本研究では、距離と高低差の有無によるトゲオオハリアリの採餌行動の選択を調査した。距離は、短距離として巣と餌場の間の距離を15 cm、長距離として45 cmに設定した。高低差は、巣と餌場の間に湾曲した橋を設けることで設定した。50%砂糖水を餌場に設置し、アリに自由に採餌させ、餌場を一定時間撮影した。その後撮影した映像から採餌行動を観察し、行動の割合を比較した。本研究では、距離の変化や高低差の変化による採餌行動の選択における変化はみられなかった。距離と高低差を同時に変化させていた場合は、採餌行動の選択に変化がみられていた。ゆえに、トゲオオハリアリは複数の条件から総合的に経路の険しさを評価しており、単独条件の差のみでは採餌行動を変化させるまでに至らなかった可能性がある。この点を明らかにするため、今後は距離の差や高低差をより顕著にして実験を行う必要がある。また、興味深い点としてコロニー間では採餌行動の選択に差がみられた。よって、コロニー内の内部環境も採餌行動に影響を与えていると考えられる。