| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-339  (Poster presentation)

壊れていたら使いたくないは本当?~ヤドカリの貝殻選択と壊れ具合~【A】
Is it true that hermit crabs don't want to use broken shells? — Shell selection and the degree of damage in hermit crabs【A】

*永瀬一菜, 和田葉子(宮崎大学)
*Hina NAGASE, Yoko WADA(Miyazaki University)

自然界において,生息地や交配相手といった資源は非常に限られており、必ずしも好ましい資源を使えるとは限らない。ヤドカリにとって,貝殻は生存と繁殖のために必要不可欠な資源である。一般的に、破損した貝殻はヤドカリに避けられることが分かっており、特に殻頂部の破損は顕著に避けられる。しかし、野外において貝殻の数や質には制限があり、ヤドカリは破損した貝殻も使わざるを得ない状況にある。
本研究では、まず、野外における破損した貝殻の割合やヤドカリによる破損した貝殻の利用状況を調べるため、宮崎県日南市の岩礁潮間帯においてコドラート調査を行った。その結果、本調査地ではイソヨコバサミClibanarius virescensが優占種であり,彼らの多くがごつごつとした外形を持つ貝殻(ごつごつ型)を利用していることが分かった。また、ごつごつ型の貝殻は殻頂部が破損しやすかった。一方で,ソフトクリーム型をした貝殻を使うことも多く,ソフトクリーム型の貝殻は殻長部より開口部が破損しやすいことが分かった。
次に、貝殻破損の有無や破損部位がイソヨコバサミの貝殻選好性に影響を与えるかを検証するため、殻長部が破損しやすいごつごつ型の貝殻と,開口部が破損しやすいソフトクリーム型の貝殻を用いて選択実験を行った。その結果、破損がない時はごつごつ型が好まれるが,破損があると,殻長部が破損したごつごつ型よりも,開口部が破損したソフトクリーム型の使用時間が長くなることが分かった。
これらの結果から、野外では貝殻の種類によって破損しやすい部位が異なっており、破損部位という要因が加わることで,イソヨコバサミの貝殻の種類に対する好みが変わることが分かった。一見質の落ちたように見える資源が,それを使用する生物にとっては,より好ましい資源である可能性がある。


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