| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-340 (Poster presentation)
捕食は生物にとって主要な選択圧の一つであり, 多くの被食者は棘などの形態的防御を進化させてきた。長い棘をもつウニ類はその代表例であり,運動性が低いにも関わらず,強い形態的防御によって捕食リスクを低減していると考えられている。これまで,ウニ類の刺激応答反応に関する研究の多くは環境条件が一定に保たれた室内条件下で行われてきた。しかし, 実際の自然環境下では水温や照度,水深などが時空間的に変動する。そのため野外環境において, 防御行動がどのように変化するか評価する必要がある。そこで本研究では,ガンガゼ Diadema setosum を対象に,野外環境における防御行動と環境条件および隠れ場所利用との関係を検証した。
宮崎県日南市の潮間帯において, 干潮時に刺激実験を行い,捕食者の接近を模した視覚刺激,物理刺激,化学刺激を与えた。棘の動きを「反応なし」「単発反応」「継続反応」「逃避」の4段階に分類し,各個体について測定した水温,照度,水深との関係を解析した。
その結果,刺激の種類によって異なる環境依存性のパターンが見られた。化学刺激では環境条件に関わらず安定して逃避行動が観察された。一方,視覚および物理刺激では環境条件の影響が認められ,高温・高照度条件では視覚刺激に対する反応個体が増加し,物理刺激では無反応個体の割合が増加した。また,水深が深いほど刺激の種類に関わらず反応が弱まる傾向が見られた。さらに,高温・高照度条件では完全に隠れる個体が増加した。
以上より,ガンガゼは強固な形態的防御のみに依存するのではなく,刺激の種類や環境条件,隠れ場所利用に応じて捕食リスクへの応答を調整していると考えられる。このように運動性が低く形態的防御を行う動物においても, 刺激特異的かつ環境依存的な防御行動の可塑性が存在することが示唆された。