| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-342  (Poster presentation)

ナンダ属ヘビ類における食性変化に伴う頭骨および歯形態の適応【A】
Adaptive change in trophic morphology associated with dietary shifts in snakes, genus Ptyas.【A】

*柳拓明, 森哲(京都大学)
*Hiroaki YANAGI, Akira MORI(Kyoto Univ.)

頭骨形態は利用する獲物の特徴に応じて適応する重要な採餌形質である。ヘビ類の頭骨には、骨同士が癒合せず靭帯で接合されている部位が多く、近接する骨が独立して可動するという特徴がある。このような形態的特徴の進化により、ヘビ類は自身の頭部よりも大きな獲物を丸呑みすることが可能となり、多様な生態的ニッチへ進出してきた。一方で、ヘビ類では小型の獲物のみを捕食する種も繰り返し進化している。このような種における頭骨形態の進化パターンを解明することは、新たな形態機能の理解において重要である。本研究では、属内で脊椎動物食性からミミズ食性への転換が複数回生じたナンダ属(Ptyas)を対象にCT撮影データを用いた頭骨形態の比較解析を行った。主成分分析の結果、ミミズ食性種では上顎骨、下顎骨、方形骨などが短縮し、口蓋骨、翼状骨、上側頭骨などが伸長していることが明らかになった。上顎骨および下顎骨は獲物の捕獲・制圧に、口蓋骨および翼状骨は嚥下時の餌輸送に関与する骨であり、これらはいずれも歯を有する部位である。ミミズ食性種における上顎骨および下顎骨の短縮は、抵抗の弱い小型獲物の捕食に適応した結果であると考えられる。一方、口蓋骨および翼状骨の伸長は、細長く餌輸送コストの高い獲物の嚥下において適応的であると推察される。ただし、歯数において有意差が一貫して認められたのは上顎骨および下顎骨のみであり、口蓋骨および翼状骨では種によって結果が異なった。方形骨および上側頭骨は開口サイズに関連する骨であり、一般に大型獲物を捕食する種ほど伸長するとされている。しかし本研究では、両骨の長さが逆方向に進化しており、ミミズ食性種において上側頭骨が相対的に長いことが示された。この結果は、上側頭骨が開口サイズの拡大以外の採餌機能にも関与している可能性を示唆する。今後、X線ビデオ撮影による頭骨運動の解析を通じて、その機能的意義の解明が期待される。


日本生態学会