| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-343 (Poster presentation)
乾燥地に生息する野生動物にとって水場は重要だが、水場周辺は人の活動も活発なため、水場周辺の利用を避ける可能性もある。遊牧が営まれているモンゴルの草原地帯に生息する野生草食獣モウコガゼルでは、人為的攪乱が大きい地域を避けることや、水場が重要でないと推測される移動パターンが示されている。しかし、広域の水場データの利用が難しかったことから、生息地選択と水場の関係は不明だった。そこで、衛星画像による地表水推定技術を用いて、モウコガゼルが水場からある程度離れた地域を選択的に利用するという仮説の検証を目的とした。モンゴルのような乾燥地では降水量の年変動により、地表水の分布状況の年変動が大きい。そのため、解析には6年間(2017–2021、2024年)の人工衛星sentinel-2の地表水分布データとモウコガゼル追跡個体18個体の夏季(6–8月)の位置情報、および2015年時点の人為的攪乱指数を用いた。人為的攪乱指数の大きい地域は水場に近い地域に位置し、解析対象地域における水場からの距離の空間分布割合は年により変動した(たとえば、10 km圏内面積割合:31–65%)。モウコガゼルの選好性はすべての年で水場から近い地域で低く、選好性が低かった距離は水場面積が大きい年ほど短かった(最小7 km:2024年、最大30 km:2018年)。これらの結果は仮説を支持し、人や家畜と野生草食獣の空間分布の要因解明に水場分布の情報を組み込んだ解析の重要性を示唆する。