| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-345  (Poster presentation)

人と野生動物の共存―給餌場における家畜と野生動物の同所利用の分析から―【A】
Coexistence between Humans and Wildlife: Insights from the Interactions between Livestock and Wildlife at Feeding Sites【A】

*平木雅, 太田貴大, 大谷洋介(大阪大学)
*Masashi HIRAKI, Takahiro OTA, Yosuke OTANI(UOsaka)

 人と野生動物は、畜産業を媒介として正と負の双方の影響を有する相互関係を形成する。正の影響としては、畜産に伴う土地利用や放牧管理が一部の野生動物にとって新たな生息機会や環境条件を提供しうることが指摘されている。例えば、放牧地における植生構造の変化や管理によって、特定の種にとって適した生息環境が形成される可能性がある。負の影響としては、家畜と野生動物の接触を通じた感染症や人獣共通感染症の伝播リスク、生産性の低下や管理コストの増大など、畜産業と公衆衛生に対する深刻な影響が指摘されている。こうした正と負の影響を相互に及ぼしながら、人と野生動物は共存しているといえる。こうした相互関係は、畜産業の場合、特に給餌場において顕著となる。給餌場は、餌資源が集中的に供給される空間であるため、様々な野生動物が集まり、家畜と野生動物、ひいては人が関わる境界領域といえる。
 本研究では、そうした給餌場における家畜と野生動物の同所利用、特に家畜―野生動物観の種間関係に着目して、自動撮影カメラによる調査を行った。本研究は放牧が行われている島根県隠岐郡知夫村の3か所の給餌場を対象に、自動撮影カメラを1か所あたり2~3台設置し、2024年12月から2025年3月にかけて調査を実施した。同所利用における種間関係は、給餌前後の1時間(計2時間)を1イベントとして家畜―野生動物間の相互交渉から評価した。
 その結果、主に3種(ウシ、カラス、ホンドタヌキ)が撮影され、これらの3種間の同所利用を相互交渉から評価した。3種間の相互交渉では、それぞれ中立的な行動だけでなく、親和的な行動や敵対的な行動が確認された。給餌場は、給餌を行う人を媒介として、家畜―野生動物の関係構築に寄与していると考えられ、間接的に人と野生動物が共存する場として機能している可能性が示唆された。


日本生態学会