| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-346 (Poster presentation)
スナガニ属Ocypode spp.は、世界中の砂浜に生息する雑食性の甲殻類でありウミガメ卵を含む様々な生物を捕食する。複数種のスナガニ属が生息している砂浜では、種間で利用する餌の構成に違いがあることが指摘されている。こうした違いが生じる要因として、種間で餌に対する嗜好性に差があることが考えられる。また、ウミガメ卵は砂中に存在するため、卵に到達する能力に種間で差があることも餌利用が異なる要因となる。そこで、スナガニ属2種間でウミガメ卵に対する嗜好性と到達能力が異なるかを2つの実験によって検証した。小笠原諸島父島の扇浦海岸からツノメガニO. ceratophthalmaとミナミスナガニO. cordimanusを採集した。嗜好性実験では、アオウミガメの死卵、ロクセンスズメダイ、ホンダワラ属の海藻、クサトベラの葉、イガイ科の二枚貝(全て父島で採集)の5種類の餌候補を同時に提示した。どちらか一方のスナガニ属1個体を実験区に入れ、赤外線カメラで8時間撮影し、餌ごとの摂餌時間を求めた。摂餌時間が最も長い餌を1、全く摂餌しなかった餌を5とする5段階で餌候補を評価しスナガニ属種間で嗜好性に差があるかをrating pattern modelにより検証した。到達可能性実験では実験区に砂を入れ、砂表からの深さが45㎝になるようにアオウミガメの死卵を10個埋めた。どちらか一方のスナガニ属1個体を実験区の砂表におき、21時から2日後の朝5時まで実験を行った。実験終了後にスナガニによって破られた卵(破卵)の有無を確認し、カイ二乗検定によりスナガニ属種間と破卵の独立性を確認した。実験の結果、スナガニ属2種間で餌への嗜好性に差があることは支持されず、ウミガメ卵への到達能力にも統計的に有意な差は認められなかった。したがって、砂浜でみられる餌利用の違いは、これら以外の要因によって生じている可能性が高い。