| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-347 (Poster presentation)
社会システムに基づく社会性昆虫の活動は、周囲の生物の重要な進化的駆動力となる。社会性昆虫の巣内に侵入して生活する社会寄生者は宿主社会と極めて密接な関係を持つため、単独性の生物が高度に組織化された社会システムにどのように適応するのかを理解する上で有効なモデル系である。これまでの研究は主として宿主―ゲストの一対一の相互作用に着目し、巣内共生者の巧妙な宿主利用戦略を明らかにしてきた。しかし実際には、限られた共通の資源を利用する複数種の寄生者が同一の宿主コロニー内に共存することが多く、寄生者間の相互作用が生じるため、各寄生種と宿主の相互作用も単一種のみが存在する場合とは異なる可能性がある。 本研究では、社会寄生性シミが宿主の攻撃頻度の上昇を介して競合種を排除することを示した。トビイロシワアリ Tetramorium tsushimae を利用する3種の社会寄生者であるクロサアリシミNipponatelurina kurosai、サトアリツカコオロギ Myrmecophilus tetramorii、ケブカアリツカコオロギ M. affinis(以降それぞれシミ、サト、ケブカ)に着目した野外調査の結果、シミとサトの共存は、偶然期待される頻度よりも有意に稀であった。またこの2種は、宿主と頻繁に接触し経口給餌を受けたケブカとは対照的に、共通して宿主から非巣仲間として扱われていたほか、宿主から固形の餌を奪取する様子が観察された。さらに、シミとサトを同じ巣の中で飼育し行動を観察した結果、シミはサトに遭遇すると、腹部の先端をサトの方へ素早く向ける腹振り行動を行うことも判明した。この行動を受けたサトは宿主からの攻撃頻度が増加したことから、腹振り行動をされた際に、宿主の攻撃反応を引き起こす物質をシミに付けられたものと思われる。これらの結果は、寄生者間の干渉が宿主―寄生者相互作用を変化させることを示しており、生息地レベルの寄生パターンを予測するうえでも重要であることを示唆する。