| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-350  (Poster presentation)

マダガスカル熱帯乾燥林におけるコクレルシファカの採食戦略の季節変化【A】
Seasonal variation in the feeding strategy of Coquerel's sifaka in a tropical dry forest in Madagascar【A】

*佐川そのみ, 佐藤宏樹(京都大学)
*Sonomi SAGAWA, Hiroki SATO(Kyoto Univ.)

熱帯乾燥林は、明瞭な雨季と乾季が存在し、植物のフェノロジーが大きく変化する。こうした環境に生息する動物にとって、食物資源の季節変動への適応は必要不可欠ある。シファカ属(Propithecus)はマダガスカル島固有の霊長類で、葉や種子の消費に適した消化管や歯を持つ一方、果実への選好性を示すことが知られている。コクレルシファカ(P. coquereli)は、季節性の顕著な熱帯乾燥林に生息するが、その生態研究はまだ乏しい。
そこで本研究は、マダガスカル北西部のアンカラファンツィカ国立公園に生息するコクレルシファカを対象に、雨季と乾季の採食戦略を比較し、季節的な資源変動への行動的適応を検討した。
調査は2024年12月〜2025月3月(雨季)と、2025年7〜9月(乾季)にかけて、1群を対象に直接行動観察を実施した。群れを追跡し5分間隔で個体の行動(採食・休息・移動・社会行動)と、採食した植物種および部位、群れの位置をGPSで記録し、雨季と乾季で採食および移動パターンを比較した。
その結果、雨季は果実が採食時間割合のうち半数を占める主要な資源であった。一方で、乾季は雨季に比べ果実の採食時間割合が少なく、種子・花・幹の割合が多かった。葉の割合は季節間で差はみられなかった。また、移動に費やした時間割合および1日の移動距離は乾季の方が少なかった。このことから、コクレルシファカは、雨季には移動コストを厭わず積極的に探索して高質な果実を中心に採食する「高コスト・高リターン」な戦略をとっていたと考えられる。対照的に、乾季には移動を控え、果実資源に固執せず多様な部位を採食する「低コスト・広食」な戦略へと切り替えることで、環境の変化に適応している可能性が示唆された。シファカの消化管や歯といった形態的特徴は、柔軟な食物転換を可能にし、環境への適応において重要な役割を果たしていると考えられる。


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