| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-352  (Poster presentation)

ハムシ科における捕食防御形質の獲得は交尾戦略の進化をもたらしたか?【A】
Has the acquisition of anti-predator traits driven the evolution of mating strategies in leaf beetles (Chrysomelidae)?【A】

*仲江川大夢, 池田紘士(東京大学)
*Hiromu NAKAEGAWA, Hiroshi IKEDA(The University of Tokyo)

捕食者による攻撃を回避するために、被食者は様々な形質を進化させてきた。これまで、捕食防御形質がもたらす生存上の有利性のような自然選択的側面は数多く検証されてきたが、一方で、防御形質の獲得が性選択にどのような影響をもたらすのかについてはほとんど未解明のままである。

カメノコハムシ亜科(甲虫目:ハムシ科)の多くの種は、鞘翅の周縁が陣笠状に広がった扁平縁という構造をもち、脚を隠すことで捕食者の攻撃を回避すると考えられている。一般的なハムシ科では、交尾中に雌が背面に乗った雄の体をキックすることで交尾を拒否する配偶者選択行動を行うことが示唆されている。しかし、脚を隠す防御形態を獲得したカメノコハムシ亜科では、雌はキック行動をできず代わりとなる交尾戦略を進化させた可能性がある。また、雌の交尾行動が進化したのであれば、雄も特殊な交尾行動を進化させてきたかもしれない。

本研究では、捕食防御形態の獲得が雌雄の交尾戦略の進化に与える影響を検証するため、防御形態をもつカメノコハムシ亜科8種と、防御形態をもたないその他のハムシ18種の雌雄の交尾行動を比較した。まず、雌の交尾拒否行動を観察した結果、防御形態をもたないハムシの雌は主にキックをすることで雄を拒否し、そのうちの多くのペアで雌が交尾を中断させることに成功していた。一方で、カメノコハムシ亜科の雌は、扁平縁が障壁となることでキックができていなかった。雌は代わりに体を振り回して交尾を拒否したが、いずれのペアにおいても交尾を中断させることができなかった。また、雄の交尾行動を種間比較した結果、カメノコハムシ亜科では、交尾器を挿入している間、雄も体を震わせる行動を特異的に行うことが明らかになった。

以上より、カメノコハムシ亜科では、捕食者に対する防御効果をもつ外部形態の進化によって、雌の配偶者選択の手段や有効性、雄の交尾戦略が変化したことが示唆された。


日本生態学会