| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-355 (Poster presentation)
栃木県内の日光国立公園では二ホンジカによる植生被害が深刻化しており、本研究対象地域である塩原地区大沼園地においても甚大な植生衰退が確認された。対策として総延長約2.8kmの侵入防護柵が設置されたが、その効果や生態系への影響を評価するためには、対象種のみならず、その地域全体の動物相を把握することが重要である。そこで本研究では、動物相および生息地利用を明らかにすることを目的とし、2024年9月1日から1年間、侵入防護柵に沿って、8地点に静止画カメラ8台、動画カメラ3台の計11台を設置し、通年のカメラトラップ調査を実施した。その結果、総稼働日数2,813台・日において、二ホンジカをはじめとした中・大型哺乳類10種、小型哺乳類3分類群、鳥類9種の計22種の野生動物が確認された。中・大型哺乳類10種は、那須塩原市で報告されている15種の約66%に相当し、比較的小規模な区域であっても森林や湿地が混在する大沼地区が地域の生物多様性維持に重要な役割を担うことが示唆された。野生動物の出現状況には植生タイプや地点環境に応じた明確な差異が認められ、多くの種は落葉広葉樹林を選好する傾向を示した。主要種であるニホンジカ(年平均撮影頻度指数=27.2)は落葉広葉樹林を繁殖・出産期の拠点として利用する一方、スギ・ヒノキ植林を移動経路や局所的採餌場として使い分け、環境に応じた選好的生息地利用が示された。また、春季には滞在・採餌行動が増加し、冬季には積雪条件に応じた移動が見られるなど季節的変動も認められた。本値は全国的にみて極めて高水準にあり、大沼地区のニホンジカの出現傾向が餌資源の量およびその利用可能性に強く影響を受けていることが示唆される。さらに、在来中型食肉目であり、森林依存性の強いニホンテンも二ホンジカに次いで高く(年平均撮影頻度指数=6.8)、本地域が一定の自然性を維持していると推察された。