| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-356 (Poster presentation)
アオウミガメは世界的に増加傾向にあり、採餌場における餌資源の競合など、新たな課題が懸念されている。沖縄県八重山諸島黒島に生息する個体は藻類や海草類を採食し、狭い範囲に年中定住する。一方で、夏季に三陸沿岸域に生息するアオウミガメは海藻や海草だけでなくゼラチン質プランクトンも摂取する雑食性であり、冬季の水温低下に伴い南に長距離移動する。しかし近年の水温上昇により、アオウミガメは高緯度域の利用が高まっている可能性がある。本研究では、生息環境ごとに、個体数の増加に伴う餌資源量の変化がアオウミガメに及ぼす影響を予測した。
黒島の個体群と三陸沿岸域の個体群を対象として調査を行った。島の周囲約13 kmの黒島では、北側と南側で海藻と海草の種分布が異なり、それぞれがアオウミガメの採餌場となっている。12個体にGPSやビデオカメラ等の装置を装着した後、北側で捕獲した個体を南側、南側で捕獲した個体を北側へ移送放流した。三陸沿岸域にて、2005-2024年のアオウミガメの混獲状況を調査した。また、両地域で栄養状態を比較するため、肥満度と血中タンパク質濃度を測定した。
黒島では、12個体中10個体が3日以内に捕獲場付近へ戻った。摂餌回数は戻る前が中央値4 回h-1、戻った後が187 回 h-1であり、戻った後大幅に増加した (Wald test, P < 0.05)。本種は特定の採餌場に固執し、その理由は個体ごとに特定の海藻種を好んでいるためと考えられる。三陸では水温と混獲数に正の相関が見られ、混獲数が年々増加していた (Wald test, P < 0.01)。肥満度と血中タンパク質濃度はいずれも三陸の個体の方が高かった (肥満度:ANCOVA, P < 0.01; 血液分析:Mann-Whitney U test, P < 0.01)。近年海草が減少している中、黒島での摂餌特性は餌資源の減少を招きやすいと考えられる。一方でゼラチン質プランクトンは個体数が増加しており、三陸沿岸域では、水温上昇に伴い採餌場としての利用が拡大していく可能性がある。