| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-359 (Poster presentation)
時間的な行動パターンの基盤の一つに、約24時間周期で生理や行動が変動する概日リズムがある。オオミズナギドリ Calonectris leucomelas という海鳥は、育雛期間に日の出とともに海へ出て日中は海上で採餌し、夜間は巣に戻り雛に給餌する。本研究では心拍数を指標として、オオミズナギドリの概日リズムの有無を明らかにすることを目的として実験を行った。オオミズナギドリの行動パターンを考えると、心拍数は海上を飛び回る日中に高く、巣に戻る夜間に低くなると予想された。
2025年に育雛中の成鳥7個体(雄3、雌4)を捕獲し、室温を25℃に保ち遮光した暗室に移送した。実験は他個体の影響を排除するため単独で行い、外部の音が聞こえない静かな条件で、夕方から翌朝までの約12時間心電図を取得した。得られた心電図記録から心拍数を算出した結果、日の出時刻を境に変化していた。日の出前後でそれぞれオオミズナギドリが静止していると推測された期間の心拍数を比較すると、全ての個体において、夜間(164±30 bpm)から日の出後(133±20 bpm)にかけて有意な低下(Mann-Whitney U検定; p < 0.001)が認められた。低下するタイミングは、繁殖コロニーにおける採餌旅行への飛び立ち時刻と概ね一致していた。他個体の影響を排除し光刺激を制御した条件下でも、心拍数変化がみられたことから、明瞭な概日リズムの存在が示唆された。夜間安静時の心拍数が高かったことは、雛への給餌や配偶者との接触など、他個体とのインタラクションが影響していると考えられた。予想に反して夜明け後に心拍数が低下した理由としては、オオミズナギドリが行うダイナミックソアリングという飛行様式により心拍数を低く保つ可能性と、自然環境下の一部の個体は日中も巣に留まるため、このパターンを反映した可能性などが考えられた。