| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-360  (Poster presentation)

八ヶ岳東麓における孤立した森林の哺乳類の利用実態【A】
Behavioural utilizations of mammals in a fragmented forest on the Yatsugatake mountains, central Japan【A】

*益子佳大, 杉山昌典, 清野達之(筑波大学)
*Keito MASHIKO, Masanori SUGIYAMA, Tatsuyuki SEINO(University of Tsukuba)

 本研究では、孤立林内に生息する哺乳類の行動割合から、孤立林の哺乳類の利用実態を明らかにすることを目的とした。孤立林は大面積の森林と比べ、隣接した環境からの移入が減少し、個体数や種多様性も減少することで、生物にとって生息地としての機能が低下しやすい。一方で、ジェネラリスト的な生物の生息地や移動経路となるなど、人為的な環境下で重要な利用地となり得る。特に、獣害が想定される地域では、孤立林の役割は小さくないと考える。獣害の代表種としてニホンジカが挙げられ、シカ類は日中は森林で過ごし、夜間に牧草地などの開けた環境を利用することが報告されている。農地と隣接する孤立林はニホンジカにとって日中の利用拠点となっている可能性がある。そのため、特にニホンジカについては、時間帯別の移動方向から、日中は孤立林内を利用し、夜間に孤立林外へ出ているのではないかという作業仮説を設定した。
 調査地は長野県南佐久郡南牧村の筑波大学八ヶ岳演習林とし、2021年6月~2025年8月の期間でカメラトラップを行い、撮影されたデータから哺乳類種を記録し、行動は採餌、移動、その他に分けて記録した。
 調査の結果、撮影された哺乳類の上位3種はニホンジカ、アカギツネ、ホンドタヌキであった。行動割合は種によって異なり、ニホンジカは採餌が多く、アカギツネは移動が多かったが、ホンドタヌキは移動が見られつつも採餌も一定数見られるなど、孤立林の利用形式は一様ではないことが示された。ニホンジカについては、採餌が多く記録された一方で、時間帯別の移動方向から、日中に演習林内に入り、夜間に演習林外へ出ている傾向が見られ、仮説を支持する結果となった。
 本研究により、農地と隣接する孤立林は哺乳類にとって複数の役割を担っており、重要な利用空間であることが示唆された。孤立林と周辺環境の関係性を踏まえた上で、獣害対策などを検討する必要があると考える。


日本生態学会