| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-361 (Poster presentation)
オニヒトデの大量発生によるサンゴの食害は、インド洋ー太平洋のサンゴ礁生態系の保全で最も大きな問題の一つである。他のヒトデ類と同様に、オニヒトデも嗅覚(海水中の化学物質の受容)によりサンゴの探索を行うと考えられる。嗅覚を利用した採餌行動のメカニズムの解明は、オニヒトデの生態に基づく食害対策の基盤を提供すると考えられるが、餌由来の化学物質を受容する証拠や分子機構は未解明である。そこで本研究では、餌のサンゴの抽出物を3kDaで高・低分子画分に分画し、抽出物への行動反応を観察した。更に、過去に推定した機能的嗅覚受容体(OR)様遺伝子を培養細胞で発現させ、分画したサンゴの抽出物を与え、抽出物刺激へのCa2+応答を測定した。
行動実験では、既知のオニヒトデの行動反応(餌のサンゴや抽出物等に対し腕を反り上げる反応)の有無を記録した。2025年5−6月には15個体、11月には7個体のオニヒトデを用いて、合計116回実験を行った。結果として、3kDa以下のサンゴ抽出物に対し、オニヒトデは最も多く反応を示した(41回中23回反応)。更にフィッシャーの正確確率検定から、3kDa以下のサンゴ抽出物への反応回数が、ネガティブコントロールのDWや3kDa以上のサンゴ抽出物への反応回数と差があることが示唆された(DWと比較した場合、p = 0.00001、反応のなかった回数に対する反応のあった回数のオッズ比 = 1.28/0.04; 3kDa以上のサンゴ抽出物と比較した場合、p = 0.0006、 オッズ比 = 1.28/0.19)。Ca2+応答の測定では、ランダムに選択した5個中2個のOR様受容体が、コントロールと比べ3kDa以下のサンゴ抽出物に応答することが検証された。
以上より、行動反応と受容体の反応の2視点から、オニヒトデはサンゴ由来の低分子シグナルを特定のOR様受容体で受容し、採餌行動に利用する可能性が示唆された。更に本成果を精査することで、化学分子によりオニヒトデの行動を誘発するような新規管理技術への応用を検討する。