| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-368  (Poster presentation)

鳥類における情動を伝える鳴き声の音響構造の収束: 全球規模での検証【A】
Convergence of Acoustic Structures in Emotional Avian Vocalizations: A Global-Scale Analysis【A】

*一色聖也(千葉大・理), 村上正志(千葉大・院・理)
*Seiya ISSHIKI(Fac. Sci., Chiba Univ.), Masashi MURAKAMI(Grad. Sci., Chiba Univ.)

音によるコミュニケーションは、広く多様な動物でみられる。特に鳥類は、鳴き声が多様化しており、さまざまな情報が符号化されている。その一つに音色は「情動」を反映すると考えられている。一般に、敵対的な文脈では低く濁った音を、友好的・非攻撃的な文脈では高く澄んだ音を発すると指摘されてきた。さらに、種間でも相互作用により類似した音に収束する可能性がある。しかし、情動音声の特性における先行研究の多くは、地理的に偏った少数種の比較に限られており、また、植生といった音を取り巻く環境との相互作用を検証した例は少ない。そこで、本研究では世界的な音声データベースから約1000種の鳥類の鳴き声データを取得して、鳥類の情動と音色の規則を検証した。非攻撃的な情動状態で発せられる警戒音声である Alarm call と、情動性の低い Flight call を対照した。主成分分析を用いて音色総体に収束が見られるかを、さらに各音色成分に対して体重や嘴サイズ、植生、地理区などが影響するかを解析した。その結果、音程および鳴き声内における音の偏りを要約した主成分について、Alarm call でFlight call より分散が小さかった。鳴き声の最高音に対しては、鳴き声タイプの違いに加えて、地理区、植生密度、そして、鳴き声タイプと地理区の交互作用の効果が確認された。また、最高音において、地理区を問わず一貫してAlarm callの分散が小さいことが明らかとなった。加えて、いずれの鳴き声も生息植生が開放的になる種において、低く純粋な音色であった。本研究の結果は、鳥類の情動音声における音響構造の収束が全球的に一様ではなく、環境や地理的条件との相互作用で形成されていることを示唆している。また、先行研究では「密な植生では高周波音の伝播に不利」と示されているが、今回の結果は逆に、Alarm call は密な植生でより高かった。今後は、先行研究で議論されてきた音と植生との相互作用について、音色と植生との関係を個別に検証する必要がある。


日本生態学会