| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-369  (Poster presentation)

亜熱帯マングローブ林におけるオキナワアナジャコの掘削行動が生態系に与える影響【A】
Ecological Impacts of Excavation Behavior of Thalassina anomala in a Subtropical Mangrove Forest【A】

*稲垣大輝(玉川大・院・農), 小嶋宥樹(玉川大・農・環境農), 安藤幹人(玉川大・院・農), 友常満利(玉川大・農・環境農)
*Daiki INAGAKI(Tamagawa Univ., Agri), Yuki KOJIMA(Tamagawa Univ., Agri-Env.), Mikito ANDO(Tamagawa Univ., Agri), Mitsutoshi TOMOTSUNE(Tamagawa Univ., Agri-Env.)

 オキナワアナジャコは亜熱帯マングローブ林の林床に生息し、巣穴の掘削に伴い大きな塚を形成する底生甲殻類である。この掘削行動は土壌を攪乱し、マングローブ林に大量に蓄積された土壌炭素の動態に影響を及ぼす可能性がある。
 本研究では、沖縄県石垣島ガブルマタ川流域のマングローブ林を対象に、SfM(Structure from Motion)技術を用いて塚の三次元形状を定量化し、その季節的変化および形成・崩壊要因を明らかにすることを目的とした。
 塚の形状変化は、地上デジタルカメラおよびドローン撮影画像から三次元モデルを構築し、高さ・底面積・体積を算出して評価した。2024年9月、12月、2025年4月および9月に調査を実施し、地上撮影では任意に選定した6個の塚、上空撮影では10 m×10 mコドラート内全域を対象とした。さらにタイムラプスカメラおよび踏査により形状変化の要因を調査した。
 地上撮影に基づく塚の体積変化は、増減を繰り返すタイプ、継続的に増加するタイプ、継続的に減少するタイプの3つに分類され、明瞭な季節性は認められなかった。増加は主に夜間の高潮位時におけるオキナワアナジャコの掘削活動によるものであり、減少は冠水や降雨による崩壊・流出が主要因であった。また、底生生物を捕食しに来た鳥類や哺乳類による掘り返しも崩壊を引き起こす要因となっていた。上空撮影では塚の平均体積は0.05~0.12 m³/100 m²で推移し、各塚の体積は0.0007~0.60 m³であった。塚数は8~20個/100 m²の範囲で変動し、年間を通じて増加傾向がみられた。さらに、土壌密度および土壌炭素含有率を用いて塚形成に伴う土壌移動量を推定したところ、コドラート内で数百 kg以上の土壌が地上部へ移動していると試算された。
 以上より、塚の形状は掘削と崩壊の動的バランスにより維持・更新されており、塚形成を通じた継続的な土壌攪乱がマングローブ林の土壌炭素動態に影響を与え得ることが示唆された。


日本生態学会