| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-371 (Poster presentation)
野生動物の採餌行動は生態系に大きな影響を与えることが知られている。なかでもイノシシの採餌行動は、土壌動物や植物根を採餌するために地面を掘り起こすことで、土壌環境や植生に影響を及ぼす。この掘り起こし行動は、現場に残る痕跡から季節変化や空間分布を評価した研究が多く、掘り起こしそのものを直接観察した研究は限られている。本研究の調査地である浅間山北麓(上信越高原国立公園内)では、イノシシによる掘り起こし痕が多数確認されている。事前調査より、確認できた掘り起こし痕の分布は季節や標高によって異なることがわかった。そこで本研究は、浅間山北麓においてトレイルカメラによる動画撮影を通じて掘り起こし行動の直接観察を行い、掘り起こしおよび行動全体の時空間的変動の把握とその要因の特定を目的とした。
調査は浅間山北麓の森林で実施した。掘り起こし痕に基づき、標高1350m、1450m、1600mの3つの標高帯の林道沿いに調査区を設け、各調査区に10m×10mのサブプロットを5つ設置した。各サブプロットにトレイルカメラを1台ずつ設置し、2025年6月から2026年1月までトリガー式で20秒の動画撮影を実施した。撮影データから、イノシシの行動を掘り起こしと非掘り起こしに分類し、2時間ごとに撮影回数を集計した。また、撮影時刻を各日の日の出・日の入り時刻に基づき昼夜に分類し、撮影回数を目的変数として一般化線形モデル(GLM)で解析した。
掘り起こしは主に夜間に行われていた。これは、餌である土壌動物が夜間に土壌表層へ移動することが一因と考えられる。また、GLMの結果、昼夜で林道からの距離に対する応答が異なった。昼間は林道から離れるほど撮影回数が増加した一方、夜間は林道に近いほど増加した。以上の結果から、比較的人為的影響が少ない浅間山北麓においても、イノシシは時間帯に応じて人為的影響を回避するように林道を利用することで、生存に不可欠な採餌を効率的に行っている可能性が示唆された。