| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-375 (Poster presentation)
気候変動や河川工作物,人為的改変によって河川生物の生息環境は悪化している。今後,サケ科魚類を保全していくためにはサケ科魚類が水系ネットワークを生活史の中でどのように利用しているか理解することが重要になる.河川生態系の魚類におけるメタ個体群に関する研究は,渓流での支流群に焦点を当てた研究は多いが,出水撹乱が大きい扇状地河川の扇端部に形成される小支流に関する研究はあまり行われていない。本研究では,扇端部における小支流がサクラマスの個体群維持に如何に寄与しているか評価するための第一段階として,成育,再生産の場としての機能に着目し評価することを目的とした.
扇状地を形成する札内川の扇端部に本流2箇所,小支流4箇所の調査区間を設け,環境評価として連続的な水温計測,水位計測を行い(本流では国土交通省のデータを2箇所の代表値として用いた)調査区間間における物理環境について評価した.2025年1月,3月,5月には冬季生息場を評価するためサクラマスの群集採取を行い,体長計測,当歳魚,越冬個体の単位時間あたりの採捕数(CPUE)算出を行った.各調査区間で1月に採捕された個体の鱗に形成された隆起線を用いて各調査区間のサクラマスの成長率を推定した.2025年9月,10月には再生産場を評価するために産卵床数のカウント調査を行い,産卵床密度を算出した.
水温変動は小支流と本流の流路区分では明確な差は見られなかった.水位変動は本流において大きく変動した.群集採取では本流に比べて小支流において越冬個体,当歳魚のCPUEが大きかった.また,各調査区間で成長率に大きな差は見らなかった.産卵床密度においても本流に比べて小支流で大きく,先行研究に比較しても大きかった.これにより,扇端部に形成される湧水性の小支流が形成する多様な環境はサクラマス個体群にとって越冬,再生産環境として重要であることが示唆された.