| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-377 (Poster presentation)
近年の環境DNA解析の技術的進歩により、水を汲むだけで生物の在・不在が特定できるようになっている。一方で、水温や水質などの環境条件によってDNAの拡散・分解プロセスが大きく異なるため、バイオマスの推定は困難が伴う。しかし、同所的に生息し、種間の環境DNA放出量が同程度な生物の種割合であれば、環境条件による拡散・分解等の程度に関わらず環境DNAの相対量から推定できると予想した。そこで本研究では、同所的に生息する近縁種であるアメマスとオショロコマ(サケ科イワナ属)を対象に、種間の環境DNAの相対濃度比が実際の相対バイオマス比と相関するかを検証した。
北海道石狩川水系空知川上流域の小支流24本において、2024年および2025年6月に電気ショッカーによる個体採捕、環境DNA解析のための水試料のサンプリングを実施した。除去法によりバイオマスを推定するとともに、環境DNA解析では、アメマス、オショロコマに特異的なプライマーを設計し、qPCR法によりイワナ属各種の環境DNA濃度を算出した。
解析の結果、両種の相対環境DNA比とバイオマス比の相関係数は0.9以上と極めて高い値を示した。これは絶対的なバイオマス推定が難しい状況でも同所的に生息する近縁種の割合であれば高い精度で推定できることを示唆している。また、群集構造や共存機構を考える上で種割合のデータは有用であり、環境DNAの新たな貢献が期待できる。
さらなる拡張を目指して、同所的に生息している属間や環境要因が著しく異なる地点間の近縁種割合においても環境DNA比率が種のバイオマス比率と相関するか検証していく必要があるものの、本手法は、形態的判別が困難な近縁種や隠蔽種にも適用可能であると考えられ、水産資源モニタリングや他生物群への応用など、幅広い展開が期待される。