| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-379 (Poster presentation)
カエル類の鳴き声(主に広告音)は種特有であり、同種の認識に利用されることが知られているが、鳴き声の種内変異に関する理解は未だ乏しい。鳴き声の高さの指標となる優位周波数は、体サイズが大きいほど低くなるほか、鳴き声の音響特性は発声時の微小環境の影響を受けて変化し、雌が繁殖場所の質を評価する際の情報として利用される場合がある。そのため、種内であっても体サイズや繁殖活動を行う環境が異なれば、多様な鳴き声変異が生じる可能性がある。新潟県佐渡島に生息するモリアオガエルは、一般に知られる山地の樹上産卵に加え、平野部の水田地帯では地中産卵もする。また、水田個体群は山地個体群と比較して体サイズが小さいことが報告されている。そこで本研究では、①小型の水田個体群は山地個体群に比べて高周波の鳴き声を示すのか、②発声場所(地中・地上・植生上)の違いが鳴き声に影響するのか、を検証した。その結果、体サイズは山地個体群よりも水田個体群の方が小型であったが、平均の優位周波数は山地個体群よりも低く、体サイズから予測される一般的な傾向とは逆の結果であった。優位周波数と体サイズの関係を考慮した解析では、同一体サイズ条件下において、水田個体群は山地個体群よりも低く鳴いていた。一方、発声場所を考慮した解析では、同一体サイズ条件下において、水田地中が最も低く、次いで水田地上、山地(地上・植生上)の順に優位周波数が高くなる傾向がみられた。つまり、水田個体群では個体群レベルで鳴き声の低周波化が生じており、さらに水田個体群内では、環境による音響特性の変化、あるいは地中で鳴く個体による可塑的応答により、より低周波の鳴き声を示した可能性がある。今後はサンプル数を増やし、繁殖時期の違い(気温等)を考慮したうえで個体群間の差異に関わる要因を検討するとともに、水田個体群内では鳴き声の高さと雌の選好性の関係について精査する必要がある。